渇いた喉に染みる赤
悪魔アルバート兄様、吸血鬼ウィリアム、吸血鬼ルイスによるウィルイス&アルルイ。
ルイスが兄様の血を飲んで、ウィリアムがルイスの血を飲んでいるいちゃ甘。
↓この吸血鬼パロウィルイスと同軸設定の3P。
昼間でもさほど明かりが差さない薄暗い屋敷の中。
そこの管理を一任されている末弟のルイスは僅かに届く陽の光を眼鏡で遮りながら、薄い腹を自らの手で撫で回した。
「…お腹、空いた…」
鳴ることはないけれど、空腹で今にも悲鳴をあげそうだ。
喉も張り付いたように渇いていて、少ない唾液を飲み込んで飢えと渇きを癒そうとしても効果はない。
ルイスはせめて体力を消耗しないよう分厚いカーテンを閉めて太陽から身を隠そうと試みる。
だが所詮は気休めに過ぎなくて、暗い室内で赤い瞳を揺らめかせながら慣れているソファへと腰掛けた。
「……意地を張らずに、兄さんの厚意を受け取っておけば良かった」
膝を立てて腕に抱き、そのまま顔を埋めるようにして大きな体を小さくさせる。
渇いた喉を意識するとますます渇いていきそうで、吐く息すらも惜しくなった。
ルイスは一族を捨ててこの地に住まう吸血鬼だ。
生まれてしばらくしてから心臓が悪いと分かり、それに伴ってか陽の光にも極端に弱かった。
通常の吸血鬼であれば人間よりもよほど優れた身体能力と優れた知能、麗しい美貌を持つことが常である。
その上ルイスが属していた一族は陽の光にも強く、晴れた日中であろうと弱体化することはない。
存在する吸血鬼のほぼ全員が優秀かつ有能であり、それが一族の誇りだった。
兄であるウィリアムはその中でも特に優秀だと噂されており、いずれ長になるのは彼だろうというのが暗黙の了解だったほどだ。
けれどそんなウィリアムの弟として生まれたルイスは彼とは違い、一族の恥晒しだと罵られる欠陥品として名を馳せていた。
心臓が悪いために身体能力は並以下、透けるように白い肌は陽の光を浴びると爛れてしまう。
唯一その美貌だけが取り柄だと言われていたけれど、とある不幸で綺麗な顔に大きな怪我を負ってしまった。
発作の起こる体を引きずり、傷を隠すように髪を伸ばし、眼球と皮膚を守るために常に眼鏡をかけて日中は外に出ることもしない。
一族の者は皆ルイスを欠陥品だと、一族に相応しくないと躍起になって追い出そうとした。
向けられる悪意に「自分はここにいてはいけない」と理解したルイスは一人その地を去ろうとしたのだが、行動を起こす前にルイスの首を切り落とそうとした同族にウィリアムの怒りが爆発したのだ。
心臓を貫くか首を切り落とすことでしか吸血鬼は命を落とさない。
正常に機能していない心臓を狙わなかったのは憐れみではなく、ただただルイスを馬鹿にしていただけに過ぎなかった。
細い首に当たる刃物を目にしたとき、ウィリアムは一族の考えを変えるのはもう無理なのだと判断する。
可愛い弟のために周りを変えようと尽力していたつもりだけれど、結局それは叶わない。
ルイスに危害を加える同族などいない方がよほど良いと、ウィリアムはその場にいた全員の心臓を自らの腕で貫いてから、ルイスとともに故郷と一族を捨てたのだ。
未来の長になるであろうウィリアムの怒りを目撃した同族が抱く恐怖は凄まじく、後を追って来ることもなかった。
二人は遠く離れた土地まで足を進め、そこで出会った魔王の息子たるアルバートに認められ、彼の弟として属することになる。
悪魔の長男、吸血鬼の次男と三男。
古くからの名門伯爵家と名高いモリアーティ家に住まう三兄弟は、それぞれ正体を隠して人間社会に溶け込んでいた。
「…ウィリアム兄さん、早く帰ってきてくれないでしょうか…」
艶のない唇を指で押さえ、吸血鬼特有の鋭い牙で指の腹を傷付ける。
ぷつり、と血の玉が現れ出て軽く啜ってみるが、予想していた通り美味しくはないし満たされることもない。
ルイスは小さなため息を吐き、舌で傷付いた指を舐めては自ら負った傷を治していった。
体が弱く満足に血を狩ることが出来なかったルイスにとって、ウィリアムは自分を守ってくれた最愛の兄というだけでなく、自らの血を分け与え命を救ってくれる存在だ。
優秀な吸血鬼であるウィリアムの血液は濃く、体力の消耗が激しいルイスの生命維持には十分すぎるほどの効力があった。
幼い頃からルイスはウィリアムの血を飲むことで生き延び、その代わりに自らの血をウィリアムに差し出している。
互いに互いの血を飲むことで生き長らえてきた異端中の異端、他にも類を見ることはないだろう。
だがウィリアムは他の誰よりルイスの血を好んでいたし、ルイスもウィリアムの血以外を欲しいとは思わなかった。
互いのために生きている二人の兄弟を、アルバートは最も美しい命だと称している。
二人は定期的に血を飲み合うことで吸血鬼特有の飢えと渇きを癒しているのだが、今日のルイスは自分の欲を見誤っていた。
陽の光に強いウィリアムは近隣大学で教授としての役職についており今は不在だ。
けれど、ルイスは今すぐにでもウィリアムの血を欲している。
元より食は細く、普通の食事や血液の代わりになるとされる赤ワインや生肉といったもので飢えを凌ぐには、胃の容量を大幅にオーバーしなければならない。
効率良く飢えを癒すためにもウィリアムの血が必要だというのに、兄の体を気遣って少量しか飲まなかった過去の自分をルイスは責めていた。
「ただいま」
「え…あ、アルバート兄様!?」
「ルイス、久しぶりだね」
飢えてひもじい思いをしていたルイスの元に、予想だにしない人物がやってきた。
この屋敷の当主でもある長兄のアルバートだ。
彼は少し前に魔王たる父の元へ訪ねると言ってこの地を離れていた。
おそらくはいずれ王としての責務を継ぐため、後継方法について確認しに行くのだろうとウィリアムは言っていた。
長ければ数年は会えないと宣言されており、事実この半年間一度も連絡がなかったのだ。
ほとんど永遠の命を持つ悪魔と吸血鬼にしてみれば束の間の時間なのだろうが、ルイスにとっては長く寂しい時間だった。
それなのに今、この場に敬愛するもう一人の兄がいる。
種族が違うにしろ、体の弱い自分を欠陥品だと罵ることなく慈しんでくれたアルバートのことを、ルイスはとても好いていた。
「アルバート兄様、お帰りなさい!」
「ただいま」
お腹が空いてもう動けないとうなだれていたルイスだが、そうは思わせない足取りの軽さでアルバートの腕の中目掛けて飛びついた。
途端に鼻をくすぐるのはアルバートが愛用している香水の匂いで、長く離れていたけれどルイスが知っている彼らしさは変わっていないのだと気付いて安堵する。
そうするとますます愛しい兄が恋しくなり、ルイスは彼の首筋に擦り寄るように頬を合わせていった。
「兄様…本物の兄様だ…」
「ただいま、ルイス」
「アルバート兄様…」
「おや、少し痩せたかい?随分と腰が細くなっている」
抱きしめられて温かい腕を腰に回され、その頼りない細さを確認するように撫でられる。
その手付きが少しばかり感じてしまうものであったことと、咎めるような言葉に気まずい思いをしたルイスは、うっとりと向けていた視線をアルバートから逸らしてしまった。
「ルイス」
「…ちゃんと、食事は摂っています」
「…はぁ、お前という子は全く…喉、渇いているんだろう?」
「わ、分かるんですか?」
「ルイスはそういったことであれば分かりやすいからな」
本心を隠すのは抜群に上手いくせにどこか詰めの甘い弟を見て、アルバートは呆れたように苦笑する。
アルバートがルイスとウィリアムと出会ったとき、吸血鬼のくせに互いの血しか飲めないなど随分と変わった兄弟だと認識していた。
けれど見目良い二人が絡み合う様はとても美しかったし、それで困っていないのならば構わないだろうと理解した上で弟に迎え入れたのだ。
当然ルイスの体が弱いことも、弱いゆえにたくさんの血が必要なことも、けれど兄に遠慮していつも最低限の量しか飲んでいないことも知っていた。
ウィリアムは多くの血を与えようとしていたけれど、ルイスがそれを拒否しては無理矢理に飲ませるわけにもいかない。
ならばと提案したのがアルバートの血液提供だ。
悪魔ではあるがどうだろうかと申し出てみれば、おずおずと手を上げて頷いてくれた日のことはよく覚えている。
ルイスはウィリアム以外で唯一、アルバートの血ならば飲むことが出来た。
「…あの、兄様。少しだけ、血を分けていただいても良いでしょうか…」
本当ならウィリアムが帰宅するまで耐えようと思っていたのだが、偶然にもアルバートが帰宅し、事情を察してくれたのだ。
ここで意地と遠慮を使っていても空腹ですぐに倒れてしまうだろう。
ルイスは申し訳なさそうに、けれども久々にアルバートの血で喉を潤せるのだという期待に満ちた赤い瞳で彼を見上げた。
「あぁ。好きなだけ飲むと良い」
「兄様…!」
そう言ってくれるだろうと信じていたけれど、実際に嫌悪を滲ませるどころか優しく微笑んでくれたのはルイスにとって喜ばしいことだ。
ウィリアムとは別のベクトルでアルバートの血はとても美味しい。
兄以外の血を飲みたいとは思えないルイスが、ウィリアム以外で唯一「美味しそう」と感じたのがアルバートなのだ。
しかも半年ぶり、久々に味わうアルバートの血。
渇いていた口腔内に唾液が浮かんできたようで、ルイスは知らず知らずに喉を鳴らしていた。
「では…ん、んん」
「…は、…」
美しく整ったアルバートの顔を両手で支え、ルイスは薄いその唇目掛けてキスをする。
少しだけかさついた唇は随分と懐かしく、境界線がなくなるほどに優しく唇を重ね合わせてからゆっくりと舌でその隙間に押し入った。
「ふ、ん…ぅ、ん、ん」
「…っ、ルイス…」
「ぁ、んっ、っ…」
積極的なその様子から随分と飢えていたことに気付いたアルバートは、ルイスから主導権を奪うようにその唇へと覆いかぶさった。
身長差はあまりないけれど、体格差は十分にある。
線の細いルイスの体を抑え込んで唇を貪るなど、もう何度も何度も経験しているのだから半年ぶりだろうと戸惑うことはなかった。
「っは、に、さま、ぁ、んむ…っ、ふ」
久々の唇と唾液は昔と変わらずとても甘い。
ぬるい体温とは違って熱い口腔内はアルバートの欲を心地よく刺激している。
細い体を抱きしめれば縋るように衣服を掴まれ、種族ゆえにアルバートが本能的に持つ支配欲を直接暴かれるようだった。
「っふ、ぁ…に、ぃさま…」
「ほら、たんとお飲み」
「…ん…兄様…あー…」
かぷりと、ルイスはアルバートの首筋へと噛み付いた。
長く深いキスを終えたばかりの二人は互いに息が乱れているが、先に仕掛けたはずのルイスばかりが荒い呼吸をしている。
肺活量の差だということは重々承知だが、噎せ返るほどに漂うアルバートのフェロモンを嗅げばキスの効果は十分にあったはずだ。
ルイスはアルバートの唾液で濡れた唇のまま、深く牙を突き立てては溢れる真っ赤な血液に吸い付いていた。
「んっ、ん…ふ、んむ…」
「お味はどうだい?」
「…ふ、んん」
アルバートへ懐くように頭を押し当て、ルイスは美味しいという気持ちを返す。
吸血鬼が誰かの血を飲む場合、対象に快楽を与えておくとその血は蜜のように甘くなる。
とても濃く、とても甘く、染み渡るほどに美味な血液となるのだ。
少量でも満足出来るそれがルイスは好物で、だからこそ可能な限り快楽を与えてから血を飲みたいと考えている。
今日のように飢えていなければセックスの最中に牙を立てることも多かった。
けれど今日は久々に会ったアルバートの血を飲めるのだから、早くその血を味わいたいと逸る気持ちをルイスが抑えられなかったのは仕方のないことだろう。
蕩けるほどに気持ちが良かったアルバートとのキスを思い返しながら、ルイスは蜂蜜のように濃厚な彼の血液をこくりこくりと飲んでいた。
口の端から垂れる赤を舌で追いかけながら、傷付けた穴を圧迫しては溢れる血を味わっていく。
アルバートも感じてくれていたことがこの血で良く分かるのだから、キスで攻めて良かったと思う。
本当なら、このままベッドに行ってしまっても良いのだけれど。
半年ぶりの肌を感じたいと思うのはルイスだけではないだろう。
アルバートは懸命に自分の首へと吸い付くルイスの腰を抱きしめて、その額に頬を当てるように頭を重ねていた。
「っ、ふ、はぁ…」
「少しは渇きも癒えたかな」
「は、ぃ…ありがとうございます、にぃさま…」
とろんと溶けた顔でルイスはアルバートの顔を見上げ、唾液と血で濡れた唇を震わせる。
赤い瞳にアルバートを映し、無意識のうちにその唇を舐めては残る僅かな血を堪能する。
深く噛み付いたはずのアルバートの首筋はルイスの唾液でうっすらと跡が残る程度になっていた。
「にいさま…おいしかったです、血…」
「それは良かった」
「アルバート、にいさま」
蕩けた瞳のまま、ルイスはアルバートに抱き付いて離れようとしない。
久々の兄に会えて離れたくないのだろうことはアルバートにも伝わっていて、この上ない優越感を覚える。
それに加えて、どうやらアルバートの血にはルイスを酔わせる催淫作用があるようなのだ。
何度も飲ませているが、その都度ルイスは思考が鈍くなる。
水の代わりにワインを飲むような食生活だからだろうかと考えて、一度ウィリアムにも血を分けてみたが彼には何の反応もなかったから、ルイスにだけ反応するのだろう。
今もルイスは気持ち良さそうに頬を染め、機嫌良さそうにアルバートへと懐いている。
「にいさま、おかえりなさい」
「あぁ、ただいま」
「ずっとまってました。かえってきてくださってうれしいです」
「私も会いたかったよ、ルイス」
「にいさま…ん、ふふ」
ごろごろと喉でも鳴らす音が聞こえてきそうなほどルイスは機嫌が良い。
細い体を抱きしめて気まぐれにその髪を撫でてみれば、緩んだ笑顔がますます愛らしく変化を見せた。
可愛い弟が甘える姿はいくらでも目に焼き付けられるけれど、ルイスが一人飢えていたのであればもう一人の弟はこの場にいないことがわかる。
まだ陽も高いし大学に行っているのだろうと見当を付けてもう一度淡く唇を重ねていると、ふいにリビングの扉が開いてそこからルイスとよく似た弟が入ってきた。
「アルバート兄さん?帰られていたんですか」
「あぁ、予定よりも早く済んだのでつい先程帰ってきた」
「そうだったんですね。お帰りなさい、アルバート兄さん。帰りを待っていました」
「ただいま、ウィリアム」
驚いたように目を見開くウィリアムを見やり、アルバートはルイスを抱きしめたまま返事をする。
敬愛する兄と可愛い弟が抱き合う姿は目の保養だ。
ウィリアムは微笑みながら二人へと近付き、ふわふわしたルイスの髪に顔を寄せてその香りを嗅ぐ。
部屋に足を踏み入れた瞬間から気付いてはいたけれど、意識してみれば痺れるほどに甘ったるいルイスの匂いがする。
アルバートによって引き出された快感でルイスの体が敏感になっているのは明らかだった。
「そろそろルイスが限界だろうと思って早く帰ってきたのですが、この様子だと問題なさそうですね。良かった」
「あぁ。帰って早々、ルイスに襲われてしまったよ」
「ふふ、そうだったのかい?ルイス」
「…ちゃんと、許可はもらいました」
からかう兄達の声に僅かな反抗を見せてから、ルイスは帰宅したウィリアムの顔を見た。
そうしてアルバートの顔を振り返り、最愛の兄が二人この場にいることを認識しては嬉しそうに笑んでいる。
「おかえりなさい、にいさん」
「ただいま、ルイス。随分、美味しそうだね…」
「ん…」
アルバートに抱きしめられているルイスの唇を指でなぞり、柔らかいその感触を味わってから紅い瞳で鋭く射抜く。
ギラリという音が聞こえてきそうなその視線にルイスは一瞬だけたじろぐが、すぐその理由に気が付いた。
アルバートと交していたキスのおかげでルイスの体は敏感になっている。
今もアルバートが腰を撫でるその仕草に感じてしまいそうになるのを必死に我慢しているのだ。
それでも少しだけ揺れている腰をアルバートは満足気に見ているし、鼻の良いウィリアムならば今のルイスから色濃く甘い香りを感じ取ることは容易だろう。
すぐにでも食らい付いてきそうなその視線にゾクゾクするほどの快感を覚え、ルイスは顎を上げて首元を差し出すように頭を傾けた。
「…どうぞ」
「いただきます」
「っん…ぁ」
ウィリアムは躊躇うことなくシャツのボタンを外し、その白い首筋へと噛み付いた。
痛みを感じたのはほんの少しだけで、背筋に届くほどの快感にルイスは瞳を閉じて感じ入る。
その様子をアルバートは背後から眺め、ウィリアムは軽く視線をよこすだけで溢れる赤い血を飲んでいった。
アルバートは帰ったばかりだと言っていたが、短時間なのに随分と可愛がってもらえたらしい。
喉を通るルイスの血はとても濃くて甘ったるいほどに美味だった。
予想していたよりも遥かに美味しいその血がアルバートのおかげだと思えば感謝しかないし、満足そうな顔をするルイスは見ていて嬉しくなる。
ウィリアムは帰宅早々のご馳走に興奮を抑えきれず喉を鳴らしていた。
「ん、んん…」
「はぁ…んー…」
せっかくアルバートから血を分けられて渇きを癒したのに、あまり飲んではまたルイスが飢えてしまうだろうか。
そう理解しているけれど、可愛らしく感じながら甘い血液を差し出すルイスの魅力に抗えなくて、ウィリアムは味わうように舌と喉を動かしていく。
まぁどうせ今夜はアルバートと二人、存分にルイスの肌を堪能することになるのだ。
そのときたくさん飲ませてあげれば良いかとウィリアムは開き直り、時折その肌を舐めながらルイスの血を味わっていく。
手持ち無沙汰な白いその手を握り締め、勢いがなくなるまでその血を味わい触れる吐息に返事をする。
数分ほど血を吸い出してからもう満足だとウィリアムは傷を唾液で濡らし、塞がっていくのを確認しながら名残惜しげに顔を上げた。
「ご馳走さま、ルイス」
「…ぼくも、ほしいです」
「ではベッドに行こうか。ここでは無粋だろう?」
「ん…」
「ルイス、おいで。一緒に行こう」
「はぃ」
差し出されたその手を取り、ルイスはアルバートの腕の中からウィリアムの腕の中に移動する。
アルバートの血は美味だが、ウィリアムの血も勿論美味だ。
初めて飲んだときも今も変わらず、いや昔よりもずっとずっと美味しく感じられる。
上手く快感を与えられている証拠だろうかと、ルイスはまとまらない思考のまま二人に連れられて寝室へと向かっていった。
(ルイス、お腹は満たされたかい?)
(はい。飲み過ぎというくらい飲みました…お腹いっぱいです)
(いつももっと飲んで良いと言ってるのに、遠慮なんてしなくて良いんだよ)
(でも僕、兄さんが飲む倍は欲しくなるので…)
(僕はワインでもある程度は凌げるし、ルイスに血をあげるくらいは問題ないって言ってるじゃないか)
(…でも)
(ウィリアム、そう怖い顔をするな。私も帰ってきたし、私とウィリアムの両方の血を飲めばルイスも保つだろう?)
(い、良いんですか兄様)
(勿論。助け合って生きていこう、三人でな)
(そうですね、兄さん)
(ありがとうございます、兄様)
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