多分きっと、人畜共通のフェロモンが出てる


モリアーティ三兄弟と猫のほのぼの話。
兄様は人にも動物にもモテモテだと思う、兄様なので。

その昔、迷子になってしまったのかそれとも捨てられたのか、一匹でか弱く鳴いている子猫を保護したことがある。
みゃあ、と鳴く猫は愛くるしい瞳でじっとルイスを見つめるものだから、ついつい絆されて両手で抱き上げてしまったのだ。
孤児だった頃にも野良猫や野良犬を愛でていたことがあるけれど、一緒に暮らせるほど余裕があったわけでもない。
ゆえにただ撫でるだけでさようならをしていたのだが、新しく建てたモリアーティ家の屋敷ならば猫の一匹や二匹、飼うことは許されるだろうか。
ルイスはふわふわした毛並みを撫でながらちらりと隣にいる兄を見上げ、その顔が優しく微笑んでいることに安堵した。

「アルバート兄さんにお願いしてみようか」
「…はい!」

ルイスもウィリアムも、どちらかといえば動物はすきな方だ。
ましてこんな道すがら、たった独りきりで生きている子猫を見捨てることは出来なかった。
ルイスの腕の中、きょろきょろと周りを気にしながらも安心した様子で体を預ける小さな子猫。
怪我をしている様子はないから、親猫とはぐれてしまったばかりなのかもしれない。

「可愛いね」
「はい。ふわふわでぬくぬくです」
「そう」

小さな弟が小さな子猫を抱いて笑っている姿はウィリアムの心を癒してくれる。
今までにもルイスが野良猫を愛でていたことがあったけれど、決して連れて行きたいと言うことはなかった。
それは自分達の身の上を考えた結果の沈黙だと理解している。
だが、アルバートの家族となり世話になっていたロックウェル伯爵家を出てようやく生活の基盤を立て直した今ならば、ルイスの望みを叶えてあげることが出来るだろう。
アルバートが猫を嫌っていなければ良いのだけれど。
ウィリアムはそう願いながら、隣で機嫌良く猫と会話をしているルイスを見守っていた。

「アルバート兄さん、猫はお好きですか?」
「猫?にゃあにゃあ鳴くあの猫かい?」
「はい」

万一アルバートが猫を嫌っている場合、実際に猫を抱いたルイスを見てもそうは言い出せないだろうというウィリアムの配慮の元、ルイスには庭で猫と遊んでいるよう指示を出した。
ルイスもそれを理解しているのか特に反論することもなく、猫を連れてリビングに面した庭先で静かに腰を下ろす。
みゃあ、と指に戯れている子猫と遊びながら、ルイスはリビングで交わされる兄達の会話に耳を澄ましている。
家を出る前に空気の入れ替え目的でテラスに続く窓を開けておいて良かったと思いながら、小さな猫をぎゅうと抱きしめた。

「猫か…」
「…あまり、得意ではないですか?」
「あぁ、いや…猫に限らず、動物はあまり得意ではないんだ」
「え?」

え、とルイスも思わず声を出してしまった。
慌てて両手で口を押さえたが、遊んでいた指がなくなって不満な猫がルイスの服を踏みつけるように前足を動かしている。
つぶらな瞳はとても可愛らしくて、ふわふわの毛並みは親猫に愛された証のように艶めいている。
こんなに可愛いのに、アルバートは猫が得意ではないという。
アルバートが嫌っているのならば、ルイスがこの猫を飼うという選択肢はない。
この屋敷の主人はアルバートで、ルイスは彼の弟とはいえ、決して同じ立場ではないのだから。
そもそも敬愛するアルバートの気持ちを無視してまで猫を飼いたいとは思えない。
ルイスにとって腕の中にいる猫よりも、自分を見つけ出し拾ってくれたアルバートの方が何倍も何十倍も大切なのだから。

「…ごめんね。きっと飼い主を見つけてあげるから」

またさようならをしなければならないことは残念だけれど、元いた場所からこの屋敷まで連れてきてしまった責任はルイスにある。
撫でてそのまま置いてきた以前とは違い、今はきちんとこの子のために安全な環境を見つけなければならないのだ。
ルイスは着ていた外套の上に子猫を置き、すぐに帰ってくるからね、と言い残して屋敷の中に入っていった。
それからしばらくの間はウィリアムと一緒に猫を飼ってくれる人を探し歩き、ようやく見つけた信用のおける人間にその子を預けることになったのだ。
アルバートにはあの日、ルイスが猫を連れていたことは知らせていない。
子猫の声は小さかったし、ルイスも気配を消していたから、いくら迂闊に声を出してしまったとはいえきっと気付いていないだろう。
何より、気付いていたのなら心優しいアルバートが本心を言うはずもない。
今までの付き合いでアルバートがいかに「家族」に優しいか、どれだけ思いやりを持った人なのかをよくよく理解している。
実母を手にかけ、慣れた使用人ごと家族を焼いてしまったアルバートは常軌を逸しているのだろう。
けれど、かつての家族を愛せなかった分だけ、今のアルバートはウィリアムとルイスをとても大事にしてくれている。
たくさんのことを教えてくれたし、短い間でも多くの気遣いと優しさを受け取った。
彼はルイスが望むのなら自分の気持ちなど簡単に押し殺してしまう人だ。
だからあの瞬間のあの言葉は間違いなくアルバートの本心で、それが分かっているからこそ、ルイスも敢えて我を通すことは出来なかった。



そんなことがあってからというもの、ルイスは町に買い出しへ行く最中に出会う猫や犬といった動物と触れ合うこともしなくなった。
触れてしまえば連れて帰りたくなるし、けれどアルバートが動物を嫌っているのであれば連れて帰ることなど出来はしない。
ならば最初から触れ合わない方が良いのだと、今日もルイスは遠目に昼寝に勤しむ猫を見てはすぐさま視線を逸らした。

「…………」

視線を逸らしたし、そもそもルイスが見かけた猫は昼寝の真っ最中だったはずなのだが、どうしてだかルイスの後を付いてきた。
もう随分と大きいその猫は飼い猫のようで、ふわふわの毛に埋もれてはいるが首にくたびれたリボンを巻いている。
一度足を止めてまじまじとその姿を見たのだから間違いはない。
どうやら猫は賢いようで、ルイスが足を止めると同じく足を止めてじっとルイスを見上げている。
そうしてルイスが歩き出すと、同じペースでその後をしっかり付いてきてしまうのだ。

「…そこのあなた、付いてこないでください」

にゃあ。
猫に話しかける自分を馬鹿馬鹿しく思いながら、それでもルイスはしっかり声を出して牽制する。
軽快な返事が返ってきたことに安堵してルイスはまた足を前に進めるけれど、伝わっていなかったのか無視しているのか、猫は変わらず付いてきた。
荷物も多くないし、たまには気分転換がてら馬車を使わず徒歩で帰宅しようとしたのが仇になっている。
このまま歩いていればすぐに屋敷が見えてしまうし、かといってそこまでこの猫を連れてくるわけにもいかない。
アルバートが猫を嫌っている以上、屋敷周辺にすら近付けてはならないのだ。
ルイスは小さく息を吐き、背後にいる猫へと視線を向ける。
成猫のようだが顔立ちはとても愛くるしい。
存分に撫で回したい気持ちに気付かないふりをして、ルイスは荷物を抱えなおしてから呼吸を整え一気に走り出した。
ジャックに鍛えられて以降、今に至るまで日々の鍛錬を怠ったことはない。
合間を見てしっかりと基礎トレーニングをこなしているのだ。
ここから屋敷まで走れば十分ほどの距離だろう。
速度を落とさず駆けていけばさすがに猫も付いてはこないはずだと、ルイスは風をその身に受けながら走り抜けていった。

「っな…!」

にゃあ、にゃーにゃー。
ルイスが門を開けて屋敷の扉を開いた瞬間、どうしてだか足元には猫がいた。
その現実に思わず驚愕の瞳で足元を見るが、猫は機嫌よく喉を鳴らして毛繕いをしているのみだ。
僅かに息を乱したルイスを気にすることなく、己の毛を自らの舌で舐めては身だしなみを整えている。
対するルイスは今この状況に分かりやすく焦っていた。
足の速さにはそこそこ自信があるとはいえ、相手は猫だ。
獣なのだから人間よりも瞬発力があることは重々承知だが、十分もの時間を駆けていられるほどの持久力などあっただろうか。
そもそもどうして屋敷の中にまで侵入してくるのだ。
そんなにも自分に遊んでほしかったのか、この猫は。
けれど今の猫は気まぐれそのもので、ルイスに構うことなく毛繕いをしているのだから意味が分からない。
猫へのそんな疑問が一気に脳裏を占領していくが、問題はそんなことではなかった。

「い、今は兄様がいるというのに…!ちょ、待ちなさいっ」

ルイスが慌てて猫を抱き上げ屋敷の外に追いやろうとした瞬間、その気配を察知したのか、猫はすぐさま屋敷の中に駆けていってしまった。
天気も良かったせいで足跡は大して残っていないが、それでもあまり清潔とはいえないだろう猫を屋敷に入れるなどありえない。
走っていく猫を追いかけながらその行先を考えたとき、ルイスの顔はすぐさま青くなった。
今リビングではアルバートとウィリアムがルイスの帰宅を待っているはずだ。
久々に三人揃っての休日、ルイスはより充実したものにしようと夕食に使用するスパイスを買いに出ていた。
すぐに帰宅すると言って出てきたのだから、二人はルイスが用意した紅茶を楽しみながらルイスを待っているのだろう。
そうだというのに、猫はアルバートがいるであろうリビング目掛けて駆けていく。
ウィリアムは猫を好いているが、アルバートは猫を嫌っている。
そんな二人が待つリビングへ、猫は容赦なく全身で突っ込んでいった。

「ちょ、待って!待ちなさいっ、こら!」

ルイスは荷物を放り出して本気で走り出し、間一髪リビングに入ったばかりの猫をようやく捕まえる。
柔らかく重たい猫は抵抗するが、ルイスは一切構わず胸に抱えて押さえ込んだ。
不満げに唸る猫を叱咤して絶対に離すまいと力を込めていると、その様子を見て何事かと驚いた兄達の声が耳に届いた。

「ルイス?」
「お帰り。随分な帰宅だね」
「え、あ…」

目を丸くさせながらルイスを見ているアルバートと、驚きながらも苦笑しているウィリアムを目にした瞬間、ルイスの頬は鮮やかに染まっていく。
見せてはいけない失態を見せてしまったことに対しての羞恥だろう。
だがそれよりもまず、アルバートが嫌う猫を屋敷に入れてしまったことの方が問題だ。
ルイスはもふもふの毛玉を抱きながらアルバートに向けて頭を下げた。

「すみません、兄様!僕の不注意で猫を屋敷に入れてしまい…すぐ外に出してきますので!」
「いや、構わないよ」
「え?」

すぐさま部屋を出て行こうとするルイスを言葉一つで押し止めて、アルバートは普段と変わらず穏やかに微笑んでいた。
その表情にも声にも嘘がないことはルイスだけでなくウィリアムにもよく理解できる。
嫌悪は感じられないし、戸惑いはあれど今この状況を歓迎しているような雰囲気すらあった。

「で、ですが…兄様は猫がお嫌いなのでしょう?」
「おや、そんなことを言った覚えはないが」
「以前尋ねたとき、あまり得意ではないと言ったことを記憶していますが」
「あぁ、得意ではないな」
「…?」

ルイスの言葉を否定し、ウィリアムの言葉を肯定する。
どう違うのだろうかとルイスだけでなくウィリアムも首を傾げていると、アルバートは苦笑したように弟の顔を交互に見た。
そうして組んでいた足を下ろし、ルイスに向けて腕を開く。
お帰りのハグだろうか。
アルバートの仕草に照れる様子を見せたルイスは、それでも抱きしめようとしてくれている兄の好意に逆らうことなく足を進める。
だが、ルイス以上にルイスに抱かれている猫の方が敏感に反応した。
もぞもぞと全力で抵抗し、アルバートに気を取られていたルイスはついその腕を離して猫を解放してしまう。
しまった、とルイスが焦ったのも束の間、猫はすぐさまアルバートに向けて駆けていく。
そうして腕を広げたアルバートの胸の中、ルイスではなく猫が収まりよく抱きしめられていた。

「…は?」
「…どういうことですか?」

初対面であるはずの猫はアルバートに抱きしめられたまま、実に機嫌よく喉をゴロゴロ鳴らしている。
その様子をいとも当然のように受け入れているアルバートは、慣れた手付きで猫の頭を撫でては続け様に喉をくすぐっていた。
てっきり自分に向けて腕を広げてくれたのだと思ったのに、自分ではなく猫に向けて腕を広げていたのだろうか。
ルイスは目を見開いて先程まで自分に付いてきていた猫がアルバートに懐く様子を見つめていた。
ウィリアムも想像していないこの状況に疑念の表情を隠せていない。

「私はどうやら動物に好かれやすい体質のようでね。そばにいるとこの通り、すぐに懐かれてしまうんだ」

そういったアルバートは苦笑しながら猫の喉を撫でている。
猫も気持ちよさそうにアルバートに抱かれており、うっとりとアルバートの指を受け入れていた。
これほどアルバートの言葉に信憑性があったことは今までなかっただろう。
確かにアルバートは猫、ひいては動物に大層好かれやすい体質のようだ。

「あまりにも懐かれてしまうものだから、離れるのに苦労してしまうんだ。懐かれるたびに飼うわけにもいかないからな」
「…だから得意ではないと?」
「あぁ。嫌いではないよ、猫に限らず一通りの動物は可愛いと思っている」
「な、なるほど…」

猫を愛でるアルバートというのは、猫を愛でるルイスとは違う良さがある。
ウィリアムはそう感じ取った。
ルイスが猫を愛でていたのは幼い頃で、愛くるしい容姿も相待ってとても可愛らしく心が癒された。
けれど今のアルバートが猫を愛でているのはどこか気品と余裕が倍増しているように感じられて、その優雅さにも拍車がかかっているように思う。
伯爵という身分を合わせて考えてもよくよく似合う姿だろう。
随分と様になっているものだとウィリアムが感心していると、近くに佇むルイスからは不穏な気配が感じ取れた。
見ればその表情は分かりやすく絶望に満ちている。
自分に広げてくれたと思った腕が実はそうではなかったのだから、裏切られた上に猫にアルバートを取られたように感じているのだろう。
ウィリアムはルイスの腕を引いて気を鎮めるようその背中を撫でていく。
アルバートがあれほど動物に好かれやすい体質だとは思っていなかった。
けれどその心根は正しすぎるほどに真っ直ぐなのだから、善悪の判断がはっきりしている動物の方がその魅力に気付きやすいのかもしれない。
ウィリアムが一人納得していると、猫はアルバートの腕を舐めては顔を押し付けて思う存分に甘えている。
今までアルバートが自分達以外にここまで優しく構う姿を見たことがない。
何となく妬けてしまうなと冗談まじりに思っていると、ウィリアム以上に妬いていたルイスがゆっくりアルバートの方へと足を進めていった。

「…兄様、その猫を借りても良いでしょうか」
「構わないよ、ほら」
「ありがとうございます」

ぅにゃあ、と猫が嫌そうに一鳴きしたかと思えば、ルイスの腕の中でも機嫌よくゴロゴロ喉を鳴らし始めた。
元々飼い猫だから誰に対しても人懐っこいのだろうか。
警戒心なく懐いてくれる様子は可愛らしいし、ルイスもついつい指を伸ばしてはその頬をくすぐるように撫でてしまう。

「ふ…ルイスが猫を抱く姿は随分と可愛らしいね」

アルバートが癒されながら末っ子の姿を見守っていると、我に帰ったルイスがソファに座る兄を見下ろした。
アルバートの腕は自分とウィリアムのものだ。
こんな得体の知れない猫に許していいような気軽な場所ではない。
己の不注意が原因とはいえ、それでもアルバートが猫を抱いて可愛がったという事実は心の狭いルイスにとって耐えられないものである。

「…兄様」
「何だい?」
「…失礼します」
「おや」

ルイスは猫を腕に抱いたまま、アルバートが座るソファの上に腰掛けた。
いや正しくはアルバートの足の間に腰を下ろし、その体に背を預けて彼の体温を感じながら猫を抱いている。
けれど控えめなルイスらしく完全には体重をかけていないようで、普段と比べて重みが足りないことにアルバートはすぐに気が付いた。
ひとまず猫を掻い潜りルイスの腹に腕を回して力を抜くよう促せば、ルイスは戸惑いながらもちらりと視線をやってからアルバートの体にゆったりと凭れていく。

「ふ、くく」

聞こえてきた笑い声に目をやると、すぐ近くでウィリアムが口元に指をやってくすくす笑っていた。
今のやりとりを見て笑っているのだろうことはすぐに分かるが、ルイスはそれに少しだけ気分を害したようで、腕を伸ばしてウィリアムを呼び寄せては隣に座るよう促していく。
照れたように拗ねている弟の気持ちを汲むべくウィリアムはアルバートの隣に腰を下ろした。

「そうだね。猫といえど、兄さんの腕の中は譲れないからね」
「はい」

なるほど、そういう理由か。
いきなり甘えてきてどうしたのかと思ったけれど、理由が分かってしまえば愛おしさしか感じない。
何ともまぁ可愛らしい嫉妬である。
たかが猫なのに、どうしても譲れないポイントがルイスの中にはあるのだろう。
アルバートは腕の中にいるルイスの肩に顎を乗せ、満足げに猫を抱いている弟を見た。
綺麗な顔をしたルイスが猫を抱く姿は見ていて目の保養になるし、この上ない癒しにもなる。
けれどそのルイス自身がアルバートへ甘えるように頭を擦り付けては笑っているし、アルバートを取られまいと躍起になっているのだ。
まるでルイスこそが猫のように思えてしまう。
昔から動物に好かれやすい性質だと知ってはいたが、ルイスもそのうちに入ってしまうのだろうか。

「ふ…」
「アルバート兄様?どうされましたか?」
「あぁいや、何でもないよ」
「そうですか?」
「大したことではないんだ。気にしなくていい」

アルバートの笑い声を聞いたルイスは身を捩り後ろを振り返る。
ウィリアムも気にした様子でアルバートを見ているが、まさかルイスを猫扱いしてそのあまりの似合い加減に笑ってしまったとは言えないだろう。
もしかするとルイスはともかく、ウィリアムは同意してくれるかもしれない。
だが敢えて口に出す必要もないはずだ。
アルバートは確かに動物に好かれやすい。
けれどルイスがアルバートに懐いてくれているのは決して成り行きではなく、三人が今まで気付き上げてきた絆の証だ。
猫のような弟だけれど懐いてくれるまでは簡単ではなかったと、アルバートは少しだけ過去を振り返りながらルイスの体を抱きしめた。



(初めて会うはずなのに、この猫は兄様のことがだいすきなようですね)
(昔からそうなんだ。どうしてだろうね)
(兄さんのことですし、何かのフェロモンでも出ているのかもしれませんね)
(あぁ、それなら納得です)
(はは、納得することかい?)
(兄様なら人間だけでなく動物にも通用するフェロモンが出ていてもおかしくありません)
(そうだね、十分にあり得るだろう)
(…ルイスはともかく、珍しく非現実的なことに賛成するじゃないか、ウィリアム)
(アルバート兄さんですから)
(兄様、僕はともかくとはどういう意味ですか?)

のらくらり。

「憂国のモリアーティ」末弟中心ファンサイト。 原作者様および出版社様、その他公式とは一切関わりがありません。

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