目論む兄、張り切る弟
モリアーティ家で開催予定の長男次男の歌唱披露会に末弟の伴奏が添えられるお話。
ピアノが弾けるルイスは良いぞ。
少しばかり冷めて香りが立たなくなっている紅茶を目の前に、名門貴族の家系であるモリアーティ伯爵家の屋敷ではうら若き当主とその弟が真剣な表情で密談を交わしていた。
用意された紅茶は彼らの弟に相当する、表向きは養子の末弟が淹れたものである。
「では兄さん、今回はそのように」
「あぁ。頼んだぞ、ウィリアム」
美しい翡翠の瞳と怪しく紅い瞳を合わせ、当主でもあるアルバートと次男であるウィリアムは双方納得したように頷いた。
そうしてようやく弟が淹れた特性のブレンドティーのカップを手に取り、その中身を煽り飲んでは今後についての思案を巡らせる。
貴族間で持ち回り制となっている貴婦人のご機嫌取り、基、お茶会という名の家庭招待会が再びモリアーティ家に回ってきた。
以前開催された茶会からさほど期間が経っていないにも関わらず、「頗る評判が良かったそうじゃないか」という人伝の言葉一つでまたも担当が回ってきたことに対し、アルバートは優雅な微笑みの裏で煮え繰り返るような苛立ちを覚えたものである。
いつものようにのらりくらりと躱そうとするが話を聞いていない貴族にアルバートの意見が通ることはなく、それならばとひと月後を指定して茶会ではなく別の催しを開催すると直々に提案してみせた。
茶会の持ち回りを避けることができないのならば、いかに婦人の相手をせず満足させられるのかに重きを置いて、アルバートは密かに考え続けていたのだ。
以前モリアーティ邸で開催された茶会は目立ったトラブルもなく、各々の手を尽くして無事に終了したと記憶している。
けれどやはり面倒なご機嫌取りは確実に屋敷の人間へ慣れない疲労を与えてしまい、そういったことには手慣れているはずのアルバートでさえ翌日以降もしばらく疲れを引きずってしまっていた。
己の魅力を理解して他者を翻弄するアルバートでさえもそうなのだから、そういった面では自分の魅力を使いこなせていないウィリアムの疲労は言うまでもない。
唯一ボンドだけが普段と変わらないままではあったが、ほとんどの人間が日頃経験しない疲労感で丸一日は使い物にならなくなってしまったのだ。
だがそれだけならば数ヶ月に一度のことと割り切って茶会を引き受けただろうが、今となってはそうも言っていられない事情が出来てしまった。
「失礼します。指示された時間になりましたが、入っても宜しいでしょうか?」
「あぁ。お入り、ルイス」
「待たせたね」
「いえ。次の作戦についての話でしょうか」
アルバートとウィリアムしかいなかった空間に末のルイスが入ってきた。
予め一時間後に来るよう指示しておいた甲斐あって、訪ねてきた時間には数分の狂いもない。
どこか淋しげな赤い瞳を鋭く光らせ、ルイスはウィリアムが立案したであろう作戦について考えている。
アルバートが茶会ではなく別の催しを提案した理由はこの末弟にあった。
以前の茶会ではルイスに会の進行管理を任せており、結果として窓一つない部屋に延々引きこもらせていたのだが、それについて当人から大層な不満の声が出ていたのだ。
僕はアルバート兄様とウィリアム兄さんのお役に立てないのでしょうかと、端正な顔に拗ねた表情を乗せてつらつらと恨み言を言う姿を見た二人の兄は揃って顔を見合わせ、「そんなことはないよ」とフォローを入れたつもりだが、生憎とルイスには響かなかった。
アルバートとウィリアムとしては、初めからルイスを茶会などという婦人との交流目的の場に出すつもりは毛頭なかったのだ。
それどころか日頃から社交界への参加も極力控えさせている。
アルバートとウィリアムにとっては唯一無二の可愛い弟であるルイスだが、彼は頬の傷跡が原因で謂れ無い誹謗中傷を受けることも多い。
彼ら兄弟にとって絆の証明とも言える大事な傷跡がそのような扱いを受けるなど、到底許せるべきことではないのだ。
当の本人は気にしていないようだが彼を大事にしている兄にとってはそのままにもしておけず、いっそのことルイスを傷付ける全てのものから隠してしまいたいと願うほどである。
ゆえに二人の兄は出来る限り人前にルイスを出さないよう配慮してきた。
そうだというのに、極々稀にアルバートとウィリアムの付き添いとしてルイスが社交界に参加する姿を見た婦人から「紫陽花の君」という通り名でルイスが呼ばれていることを知ったときには随分と驚いたものだ。
さすが美に敏感な貴族といったところで、頬の傷跡から嫌煙されがちなルイスが持つ淡くも優美な憂いに気が付いたらしい。
見る目があるといえば聞こえは良いが、好意であろうと嫌悪であろうとたとえどんな感情を向けられても、不特定多数の前にルイスを出したくない気持ちに変わりはない。
彼を愛しく思う兄達にとって、ルイスは隠しておきたいとっておきの秘密なのだから。
そんなルイスを飢えた貴婦人の前に出して、万が一にもつまみ食いされるような真似があってはならない。
だから婦人の相手どころか婦人の目に届く範囲にすら配置しなかったと知れば、兄思いで一生懸命な末弟はさぞかし憤ることだろう。
ゆえにこの事実はルイスには話さないことで兄同士で暗黙の了解となっている。
「作戦についての話ではないよ。実はルイス、君に頼みたいことがあるんだ」
「ウィリアム兄さんの依頼であるならば何なりと」
「ありがとう」
相変わらずこの末弟はウィリアムのこととなれば一切の躊躇をせず、全てのことに了解の意を返してしまう。
命すら捧げた身であるのだから当然のことかもしれないが、それでもその懸命さはウィリアムの気を良くするし、アルバートも二人の関係が垣間見えるようで愛おしかった。
そうして立ち続けていたルイスへソファに座るよう促し、ウィリアムは徐ろに口を開いていく。
「実は来月第二週の休日に、もう一度この屋敷で家庭招待会を開催することになったんだ」
「…どういうことでしょうか。つい先日、当家でお茶会を開催したばかりだと記憶していますが」
「あぁ、その通りだよルイス。けれどそのときの評判が上々で、期間を空けずして担当が回ってきてしまった、ということなんだ」
「アルバート兄様の躱しも通用しなかった、と?」
「不本意ながら、ね」
アルバートが気怠げに視線をそらす様子を視界に収め、ルイスは強引に話を進めたであろう貴族の顔を数名思い浮かべた。
この長兄すらも丸め込む手腕はさすがと言って良い。
けれどアルバートにこんな表情をさせたことに関しては褒められたものではないし、また面倒なことになるとルイスは漏れ出そうになったため息をかろうじてぐっと飲み込んだ。
「事情は分かりました。もう一度お茶会の準備を進めていけば良いんですね。以前と違って時間がありますし、先生と相談して綿密なスケジュールを練っておきましょう」
「いや、それは良いんだ。今回はお茶会を開くわけではないからね」
「は、ぁ…?」
「お茶会とは正式に言えば家庭招待会だからね。婦人の相手をしないためにはどうしたら良いか、兄さんが良いアイディアを出してくれたんだ」
「アルバート兄様が?」
「あぁ」
ウィリアムの言う通り、持ち回りで開催されるそれは茶会であることがほとんどだが、基本的には貴族の地位と名誉を誇示する屋敷案内を兼ねた家庭招待会である。
屋敷およびその住人との交流が出来るならば茶会である必要はない。
けれどイレギュラーを好まない貴族の間では茶会が定番であるし、並から外れて目を付けられても支障が出る。
そうだというのに、アルバート自らが茶会ではない何かを提案するなど一体どういうことだろうかと、ルイスは大きな瞳を丸くさせて目の前に座る彼を見た。
「大勢の婦人を相手にするのは流石に骨が折れると前回学んだからね。今回は一人一人相手にせずとも満足させられるよう、私とウィリアムで歌でも披露することにしたんだ」
「アルバート兄様とウィリアム兄さんが、歌を?」
思わず、と言ったようにルイスがアルバートの言葉を繰り返せば、その彼とウィリアムからは気品漂う美しい微笑みが返ってきた。
アルバートの思惑としては、個々に婦人の相手をしていたのではいくら時間があっても足りないし、どうしても目の届かない婦人がいた場合にはまたも屋敷内への不用意な侵入を許すことになる。
何より対応する側の精神的疲労と苦痛が計り知れない。
そうならないためには彼女達の注目を一度に集め、且つその注目を逸らさないようにすれば良いと考えたのだ。
そのためには彼女達の目的でもあるアルバートやウィリアム自身を使う他ない。
いっそ歌でも歌って気を引こうかと冗談交じりで考えたのだが、よくよく考えた結果、思いの外悪くない案だろうとウィリアムに相談したのだ。
ウィリアムもまた婦人の相手をするのは面倒に感じていたし、歌の一曲や二曲披露すれば終えられると考えれば悪くない案だと、快くアルバートの意見に同意した。
「…お二人の歌声は十分に知っておりますし、もれなく全ての御婦人方を魅了することでしょう。けれど、お二人に余計なファンが増える要因にもなるのでは?」
「勿論、数曲披露したらすぐに下がって後は先生やモランに対応を任せるつもりだよ。歌唱披露以外は対応しないと銘打っておくしね」
「…その場合、僕は一体何をすれば良いのですか?」
ルイスは生まれた時から自分に子守唄を届けてくれたウィリアムの歌声は当然のこと、時折聞かせてもらっていたアルバートの歌声のどちらもよく知っている。
完璧主義な二人らしく素晴らしい美声は敢えて言及する必要もない。
ルイスとてこの二人の兄によるデュエットなど、楽しみ以外の感情を抱くことすらないだろう。
出来るならば独り占めして、自分だけが聞いていたいと思えるほど魅力的な提案である。
だからこそそれを不特定多数の貴族の前で披露するとなると、少しばかり惜しい気持ちもあった。
けれどアルバートが提案しウィリアムが了承したのであればルイスが反対する理由はどこにもないし、ルイスはただただ二人のサポートに全力を尽くすのみである。
そうして脳裏に過ぎるのは以前開催された茶会で、ただ一人隔離された状態での進行管理を任されていたときの記憶だった。
あのときのルイスは与えられた役割を全うしてはいたが、アルバートとウィリアムのサポートが出来ないまま一日が終わってしまったことを今でも悔いている。
二人のために在りたいのに、直接二人のためになるようなことは一切ないままだったのだ。
滞りなく会が終了したのはルイスの手腕も多分に含まれているだろうが、それを鵜呑みにするほどルイスは軽い人間でもない。
かつての茶会での自分は役に立てなかったと、ルイスはそう自己評価を下しているのだ。
もしかするとまた役立たずだと暗に言われるような配置になるのではないかと、ルイスは不安げにウィリアムを見上げる。
そんな弟の視線に気付き、極力優しく笑みを深めたウィリアムは耳馴染みの良い声で答えを教えてあげた。
「ルイスには、僕とアルバート兄さんが歌う曲の伴奏をお願いしたいんだ」
「伴奏、ですか?」
「あぁ」
ウィリアムとアルバートの頭の中ではルイスも含めた兄弟全員での歌声を披露する案も出ていたが、それは一切の音になることなく二人の間で却下されていた。
余計な虫が付いては困るのだから、当然ルイスが舞台上に上がって注目を浴びることなど許せるはずもない。
だがそうなるとルイスはまたも裏方へ回ることになり、本人の不満が今度こそ爆発するのは火を見るより明らかである。
ウィリアムはそんな弟の未来を察知して、ならばとアルバートの提案に鮮やかな脚色を加えてみせたのだ。
末弟の伴奏による長男と次男の歌声披露と聞けば、ルイスも不満はないだろう。
「ピアノはまだ弾けるだろう?気分転換に弾いている姿をよく見ているしね」
「で、ですが…お二人の歌声に相応しい伴奏となると、遊び半分の僕の演奏では間に合わないかと思います」
「そんなことはないだろう。まだひと月あるし、合間に練習すればルイスの腕なら十分すぎるほどだ」
「兄様…」
ルイスはイートン校時代及び屋敷の執務をジャックに習う際、嗜みとしてピアノ演奏について軽く学んでいる。
伴奏を習い始めた理由としては、伯爵家使用人としての立場を担うからには社交界の伴奏を担当出来るように、というものだった。
けれど実際にその機会に恵まれることはなく、このまま伴奏を披露することもないだろうと、日々の忙しさも相まっていつのまにか修練自体を辞めてしまっていたのだ。
それからはルイスの気の向くまま、手の空いたときに思いを吐き出すためピアノに触れる程度でしか演奏することはなかった。
元々自分を出すことが得意ではないし、ウィリアムやアルバートほど人当たりが良いわけでもない。
ルイスにとってウィリアムとアルバート以外は心底どうでも良くて、その二人がルイスを肯定してくれているからこの性分を直すつもりも変えるつもりもなかった。
けれど表に出さず燻ったままの言い知れない感情を吐き出す機会として、ピアノの演奏はルイスにぴたり合っていたのだ。
思うまま鍵盤に指を叩きつけ、抑え込んでいた感情そのものをピアノの音色に乗せていく。
それは時折感じる孤独感や焦りだけでなく、ふとした歓喜や愛に満ち溢れた感情も乗せていた。
もはやほとんど自己流になってしまっているルイスの演奏をウィリアムは隠れて聞いていたし、アルバートと揃って堪能していたことにルイスは何となく勘付いていた。
隠れて聞かれているのは少しばかり恥ずかしかったけれど、二人が醸し出す空気は限りなく優しいものだったから、ルイスはわざと気にしないよう努めていたのだ。
ピアノの演奏はルイスにとって、誰より愛しい二人の兄にすら吐き出せない思いの捌け口になってくれていたのだから。
「以前のお茶会では閉じ込めてしまってすまなかったね。そのときの挽回とまではいかないが、ルイスの伴奏で私達の歌を盛り上げてくれるかい?」
「…アルバート兄様」
「君なら安心して任せられる。ルイス、お願いできるかな?」
「ウィリアム兄さん…」
ルイスは遊び半分だというが、教えればすぐに吸収してしまう物覚えの良さを存分に発揮しているのが彼の演奏でもある。
数々の芸術に触れてきたアルバートでさえ合格点を出しているほどの腕前でもあるのだから、ひと月も練習をともにすれば十分すぎるほどの完成度になるだろう。
むしろその伴奏に見劣りしないよう、ウィリアムとアルバートの方こそ鈍った喉を鍛えておく必要があるほどだ。
裏方に回せばルイスは納得しないだろうし、舞台に上がって注目を集めるのは論外、そうなると必然的に奏者になってもらうしか道は残されていない。
そして何よりルイスだけが頼りだと言えば、兄に盲目的なこの弟は喜んで了解してくれるだろうという確信があった。
「…お任せください、お二人とも!不肖このルイス、お二人の歌声に見劣りのない、完璧な伴奏を披露してみせます!!」
拳を握って勢いよく顔を上げたルイスの顔は、大事な兄に大役を任されたという歓喜でいっぱいだった。
それに加えて持ち前の責任感ゆえか、演目すら決まっていないのに今にも張り切ってピアノの調律をして練習を始めようと意気込んでいる。
想像していた通りの反応をするルイスを見て、ウィリアムとアルバートの二人は彼に気付かれないようそっとほくそ笑んだ。
「ありがとう、ルイス。助かるよ」
「開催までの間、三人で練習を重ねていくとしようか」
「はい!頑張りましょう、お二人とも!来席される方々が満足する一曲、僕達ならばきっと作り上げられます!」
「そうだね、頑張っていこうか」
二十歳を過ぎているというのに変わらず無垢で、いっそ無邪気なほどに喜んでいるのは兄弟三人で何かを作り上げることに憧れていたからだろう。
ウィリアムもアルバートも勿論嬉しく思っている。
そして想定していた通りのシナリオをなぞっていることも、二人の兄をより一層喜ばせていた。
「(上手くいきましたね、アルバート兄さん)」
「(あぁ、そうだなウィリアム)」
「何か仰いましたか?」
「何でもないよ、ルイス」
「そうですか」
今度こそ目に見えてウィリアムとアルバートの役に立ることが出来ると、ルイスは無邪気に喜んでいる。
対するウィリアムとアルバートはルイスの希望を考慮して裏方に配置することなく、かといって注目を浴びることもない奏者という立場を任せることが出来て心底安心している。
これで当日はサービスの一環として婦人にウインクの一つでも送れば奏者に意識が向くこともないだろう。
念には念を入れてルイスの顔が見えないようピアノを設置して、万一のことがないようピアノ周辺に弾幕でも吊るしておけば間違いはないはずだ。
兄の歌声に合わせて伴奏すればルイスは満足するだろうし、演奏中のルイスが婦人達に見えなければウィリアムとアルバートの懸念も晴れる。
正にWIN-WIN、両者にとって得しかない家庭招待会となるに違いない。
「ウィリアム兄さんの歌もアルバート兄様の歌もここしばらく聞いていないので、練習で聞くのが楽しみです」
「ふふ。ルイス以外の前で披露するとなると学生の時以来だから少し緊張するね」
「私もそうだな。もう何年も人前では歌っていないから、勘を取り戻すのに時間がかかりそうだ」
「お二人なら心配ありません。僕に歌ってくれるときの歌声には少しの衰えもありませんよ」
「ルイスがそう言ってくれるなら自信がつくね。ありがとう」
「練習では久々にルイスの歌も聞きたいものだね」
分かりやすく喜んでいるルイスは二人の兄にとって随分と幼くて可愛らしく映る。
ピアノだけでなく歌声も魅力的な彼の声はどこぞの貴婦人へ聞かせるには勿体無いのだから、三人揃った歌声は練習中だけの秘密になるだろう。
本来ならば演奏を聞かせることも惜しいのだが、ある程度の譲歩はしてやるべきだ。
独占欲と過保護が行き過ぎている兄達が考えていることには気付かないまま、ルイスは浮かれた状態で先立って部屋を出る。
それを追いかけながらウィリアムとアルバートは有能で万能な弟を思い、兄弟三人で繰り広げる密なる練習期間を楽しみに今後を過ごすと決めるのだった。
(ウィリアム、ルイスからこの布をホールに持って行けって言われたんだが、どこに置けば良いんだ?)
(ありがとう、モラン。ピアノの上に設置して欲しいんだけどお願いできるかな)
(任せろ)
(おい、この辺りでいいのか?)
(うん、そうだね…いや、もう少し下へ垂れ下がるように吊るしてもらえるかい?)
(これ以上か?演奏するルイスの邪魔になるんじゃねぇか?)
(ルイスは観客の方を見ないだろうし構わないよ。観客からもルイスの顔が見えないようにしてほしいんだ)
(あぁ、なるほどな…徹底してんな、おまえ)
(ふふ、念には念を入れないとね。何せ僕の弟は「紫陽花の君」と呼ばれているらしいから、その彼が見事な演奏をしているとバレたら後が面倒だろう?)
(まぁそりゃあな)
(ルイスに悪い虫がついては困るからね、やれるだけのことはやっておかないと)
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