君以上に大事な人なんていない
「君をずっと大事に想うよ」のウィリアムサイド。
大人ウィリアム×しょたルイス。
久々にベッドでよく眠った次の日は、やはり心身ともに好調だと感じる。
軽く手を握っては開いてみて、昨日までとは違う身体の軽さに思わず感嘆するほどだ。
意識を失うまで働くことに何の抵抗もないけれど、僕がそれを受け入れてもルイスがそれを受け入れない。
僕たちの目的のために、彼なりの許容範囲ぎりぎりまで譲歩してくれていることはよく理解している。
僕とアルバート兄さんのことを第一に考えるルイスのことだから、その譲歩も苦渋の決断なんだろう。
だから僕はそのラインを超えないよう、何より彼を心配させないよう意識して休むことにしていた。
それでも時々気を失うように眠りに就くことはあるけれど、以前よりもルイスの表情が安堵を感じさせることに気付いてからは、悪くない判断だったと思わざるを得ない。
生まれたときからずっと一緒にいる、まるで半身のような彼のためなら、多少の遠回りは受け入れるべきだ。
今朝触れ合った彼の温もりを思い出しながら、僕は視線を手元に落として学術誌に目を通していった。
「…ん?」
ガシャン、と何かが割れる音が聞こえた気がした。
書斎で学術誌を読んでいた僕の耳に何かの音が聞こえてきて、集中力が途切れていたことを知る。
ふと視線を上げて時計を見れば、書斎にこもってからゆうに3時間は経っていたらしい。
喉も乾いたことだし、集中力も切れたことだからそろそろお茶にするのもいいかもしれない。
ゆっくりとソファから立ち上がり、リビングの方へと足を向けながら先ほどの音について考えた。
大方、誰かがカップでも割ったんだろう。
厨房に足を踏み入れるのはルイスくらいだが、モランあたりが腹を空かせて食料を漁った拍子に誤って落としたのかもしれない。
ルイスがカップを落とす可能性もなくはないが、慎重派な彼からはあまりに想像しにくい失態だ。
さて、誰が犯人だろうか。
推理と呼ぶのもおこがましいほど拙い想像に、我ながら気が抜けているな、と苦笑しながらリビングの隣にある厨房への扉を開けた。
「やぁ、今の音の正体は何だい?」
「…っ!?」
「…」
アルバート兄さんとフレッドがいない今、どうせモランが皿の一枚や二枚割ったんだろうと考えていた。
もしくはコソ泥でも侵入したか、ルイスがそのコソ泥と応戦でもしてるのか。
その程度のことしか推理していなかった僕の目に入ったのは、割れた陶器の破片に囲まれた幼い少年の姿だった。
「君は…」
「だ、誰だ…!」
大きいであろう瞳を懸命に鋭くして僕を睨みつけるその姿は、まるで手負いの子猫が精一杯に威嚇しているようだった。
だが悲しいかな、小柄で可愛らしい顔立ちをしている子どもの威嚇など、ただただ愛らしいだけだ。
ゆえに僕は一切の恐怖を感じずに、じっと目の前にいる少年の姿を目に焼き付ける。
落ち着いた金の髪に赤褐色の瞳、前髪を上げているため真っ白い額がよく見えた。
幼くも顔立ちの整ったその少年に、僕はとても見覚えがある。
いや、見覚えがあるどころの話ではない。
「ルイス…?」
目の前の少年の外見は、どう見ても僕のたった一人の弟の姿に他ならなかった。
「…何故、僕の名前を知っている」
確信しかなかったが、やはりこの少年はルイスで間違いないようだ。
警戒心を解かずに僕と対峙するその瞳には、戸惑いと恐怖が混在して見えた。
「…そうだね、どう説明すればいいのかな。それより、君はどうしてここにいるんだい?」
「…ここはどこだ」
「ダラムにある僕の屋敷だよ」
「だ、ダラム?何でそんなところに…?さっきまでロンドンにいたのに」
「ロンドン、か…ねぇ君、いくつか質問して良いかな?」
「…」
厨房には彼以外いないことを確認し、僕は目の前の少年にゆったりと微笑みかけた。
しゃがみこんでいた姿勢からゆっくりと立ち上がる少年と、視線を合わせるように軽く腰を下ろす。
少年は周りを見てすぐには逃げられないことに気付いたのか、手を胸に当てて軽く半身を引いてから僕の問いかけに小さく頷いた。
「まず一つ。君の名前はルイスで間違いないね?」
「…あぁ」
「年はいくつだい?」
「…」
「おや、これは内緒なんだ。じゃあ別の質問。今は西暦何年だろう?」
「…1866年」
「1866年、ね。じゃあルイス、さっきまで君は何をしていたんだい?」
「…急に胸が痛くなって、しゃがんでいた。目を開けたらここにいた」
「そうか…この場所に見覚えはないんだね?」
「…ない」
「さっきまで君がいたのはロンドンのモリアーティ伯爵家で間違いないね?」
「…何故知っている?」
「さぁ、どうしてだろうね」
慎重に答えている様子がどうにも幼く可愛く見えて、ふふ、と微笑んでみせると、戸惑うように僕を見上げる瞳と目が合った。
澄んだ赤褐色の瞳に自分の姿が映っていることを確認して、再び厨房の中を観察する。
きちんと計量されたであろう紅茶の葉が入ったティーポットに、火を消したばかりであろうコンロの上に沸かしたての湯が用意してある。
僕が愛用しているカップはテーブルに置かれているが、普段ルイスが使用しているカップと来客用のカップが割れて少年の周りに散っていた。
この状況から、つい先ほどまでここで紅茶の準備をしていた人間がいたことは明白だ。
今この屋敷には僕とルイス、そしてモランの三人しかいない。
モランが紅茶など用意する人間でないことは明白だし、どうせ今頃は昼寝でもしているはずだ。
そうなると、僕を除いた残りの人間はルイスしかいない。
まして僕はつい今朝方、ルイスから「紅茶を持っていく」と告げられているのだ。
彼なら僕の集中力が切れる頃を見計らってティータイムの用意をするだろう。
僕が好んで飲むダージリンの茶葉に、僕しか紅茶に入れない蜂蜜まで準備されていた。
つまり、この紅茶は僕のために用意されたもので、準備していたのは間違いなくルイスだ。
だが今この場所にルイスがおらず、代わりに幼い頃のルイスに良く似た少年がいる。
しかも少年の名前がルイスと来たら、導き出される答えはいくら非現実的であろうと一つしかない。
「入れ替わってしまったのかな」
「はぁ?」
今はここにいない弟を思い、歌うように自分の突拍子もない推理を口に出す。
訳が分からない、と首を傾げて訝しげに僕を見上げる幼い少年に、再び微笑みかけた。
「ねぇルイス。君に兄弟はいるかな?」
「…いる」
ほら、もう間違いようがない。
数えきれないほどの時間をともに過ごしてきた弟を、この僕が間違えるはずないのだ。
この少年は13年前のルイスで、僕の実の弟だ。
真っ直ぐで澄んだ瞳を、他の誰かと見間違えるわけがない。
「お兄さんかな?」
「…あぁ」
今ここにいないルイスの行方も気になるけど、目の前の少年も僕の弟であるルイスだ。
放っておくことは出来ないし、したくない。
何より、懐かしさで胸がいっぱいになってしまった。
見知らぬ場所でたった一人、心細く思いながらも精一杯の虚勢を張る弟を見捨てるなんてありえない話だ。
まだ何の傷もなく真っ白い頬に触れようと手を伸ばせば、ピクリと肩が震えたが拒否されることはなく触れさせてもらえた。
「悪いけど、君がどうやってここに来たのか僕にも分からないんだ。ごめんね」
「…そう…ですか」
「それより、いつまでもそこに居たら危ないから、こちらにおいで」
「…はい」
割れた破片の中央で立ち竦む幼いルイスの手を引いて、破片を踏まないよう誘導しながらリビングまで案内する。
先を行く僕の後をちゃんとついてくる様子がますます子猫のように見えて、こんな時期もあったなぁと感慨深く浸ってしまう。
一人掛け用のソファに座るよう促し、その向かいのソファに腰を下ろす。
すると少しは警戒心を解いてくれたのか、会ったばかりの頃より多少は鋭さが減った瞳でじっと見られた。
ただその様子が、まるで僕を値踏みするかのようだった。
もしや、と思っていると、幼いルイスは戸惑いながら小さな口を開いて喋り出す。
「…僕の、兄さんは…僕よりも少し背が高くて、頭の良い人なんです」
「そうなんだ」
「…あの」
「ん?どうしたのかな?」
「…あなたの名前は何ですか?」
「…」
少し震えながら僕の名前を尋ねるその様子に、簡単にルイスの真意が分かってしまう。
僕は昔の外見から予想もつかない成長をしたわけではないし、昔の面影は存分に残っているはずだ。
ルイスの知る兄よりも13歳ほど年を重ねてはいるが、誰だか分からないほど別人になっているとも思えない。
縋るように僕を見るルイスの顔を見て、どう答えるのが一番楽しいだろうかと僕は頭を働かせた。
可愛い弟の可愛い姿を見られるのは、この上ない兄の特権だと僕は考える。
「…ウィリアム」
「…うぃりあむ?」
「そう。聞き覚えはあるよね?ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ。モリアーティ伯爵家の次男だよ」
「ウィリアムさま、ですか…」
僕の言葉を聞いた途端、下がっていたルイスの肩が再び張りつめるように角度を持つ。
期待を裏切られて落胆した様子と、ならば油断はできないという警戒が顕著に感じられて中々楽しい。
再び僕を睨みつけるように大きな瞳が鋭く形を変える様子を、愉悦を感じながら見るというのは乙なものだ。
だが、可愛い弟をこれ以上からかうのも可哀想に思う。
思わず声に出して笑ってしまいそうになるのを必死に堪えて、警戒心たっぷりの子猫に正解を教えるため視線を動かす。
分かりやすく今の状況を伝えるには、今この世界の時間を教えるのが手っ取り早い。
刺すような警戒心には気付かないふりをして、僕は目の前のテーブルに置かれていた今日の新聞を三紙とも彼に手渡した。
受け取りたくない、という無言の抵抗を無視して、押し付けるように小さな手に三通の新聞を持たせる。
「今日の日付、分かるかい?」
「日付…?…っ」
「今はね、1866年じゃなくて1879年なんだ」
「じゅ、13年後…?」
「君にとってはね。…それと、僕の本当の名前はウィリアムじゃないんだ」
「え、」
驚愕で大きな瞳が更に大きくなるのを間近で楽しみながら、戸惑いと混乱が大きくなったルイスに一際大きな戸惑いと、そして安心を与えるために僕は口を開く。
「――――」
「っ!」
「事情は分からないけれど、君は未来に来てしまったようだね…ルイス」
「に、ぃさん…?」
「うん。おいで、ルイス」
今ではもうルイスとアルバート兄さんしか知らない、僕の本当の名前を幼い彼に優しく囁く。
にっこりと笑いかけてみせれば、彼にしては行儀が悪く、机を跨ぐようにして勢いよく腕の中に飛び込んできた。
だけどそれを咎めるよりも、心細かったであろうルイスの背をゆっくりと撫でて宥めてあげる方が優先事項だ。
この頃のルイスの世界には、僕しかいなかっただろうから。
僕もそうだったけれど、互いにしか心を許していない生活だった。
そんな最中、一人見知らぬ地で精一杯の虚勢を張るのはきっと骨が折れただろう。
見るからに細い腕なのに、しがみ付く力は見た目以上に強い。
僕を警戒していた分だけ抱きつく力が強いのかもしれないな。
首筋にふわりとした柔らかい感触の髪の毛が擦り付けられ、今も昔も変わらないそれにそっと笑みを深めた。
「や、やっぱり!兄さんだと思いました!兄さんと同じお顔立ちで、喋り方も同じで…!」
「うん。分かってもらえて嬉しいよ」
「でも、ウィリアムって…聞いたときは凄く嫌でした…」
「ごめんごめん。からかいすぎたね、謝るよ」
「…」
膝の上に乗りながら悔しそうに瞳を歪めているのは僕のからかいが原因ではなく、今仕えているモリアーティ家次男を思い出しているからなのだろう。
なるほど、確かに僕の姿であの男の名前を出されては、先の未来を知らないルイスにとっては酷だったのかもしれない。
元の名前に未練がないと言えば嘘だが、ウィリアムという名前はもう僕の一部だから、考えが足りなかったことは事実だ。
幼い彼にこれからの未来を教えてあげても良いが、それはおそらく禁忌なのだろう。
拗ねたように唇を尖らせるルイスの頭を撫でて、彼の瞳を見ながらもう一度だけ謝ってみせる。
「ルイス、ごめんよ」
「…もう、いいです」
不機嫌だったルイスがやんわりと雰囲気を変えて、少しだけ頬を染めて許してくれた。
大人になった今のルイスは綺麗だけど、昔のルイスはやはり随分と可愛らしい。
許してくれてありがとう、という気持ちを込めてぎゅうと抱きしめ額にキスをしてやれば、「くすぐったいです」と笑いかけてくれるのだからお手上げだ。
「可愛いね、ルイスは」
「未来の兄さんは格好良いですね」
周りには誰もいないが、あえて互いにだけ聞こえるよう囁くように会話をする。
頭も体も手も足も小さく未発達なルイスは、どうにも僕の庇護欲をそそる。
膝に乗る重みが随分軽く感じてしまうのと同時に、ふと厨房で見たルイスの様子を思い出した。
ここにやってくる前に胸の痛みを感じ、ここに来てからは手に胸を当てて僕を警戒していたルイス。
13年前、モリアーティ家の養子になった翌年といえば…
「ルイス、心臓の調子はどうなんだい?手術はもう済んだのかな?」
「大丈夫です。手術はひと月前に終わりましたし、今は順調に経過しています」
「ひと月前?まだじっとしていないと駄目じゃないか」
「平気です」
「駄目だ」
僕の首に懐いていたルイスの体をそのまま抱き上げ、リビングを出て寝室に向かう。
なるべく手術を終えたばかりの小さな体を揺らさないよう、隙間なく抱きしめて慎重に廊下を歩く。
まだひと月しか経っていない体に負担をかけてほしくないという僕の願いゆえの行動だが、ルイスにはそれが分からなかったらしい。
「に、兄さん!僕歩けます!大丈夫ですから下ろしてください!」
「駄目だって言ってるだろう。まだひと月しか経っていないなら、大事を取って安静にすべきだ」
「でも少しなら大丈夫だってお医者さまにも言われています!」
「僕は聞いていないな」
「に、兄さん…!?」
「いいから、大人しくしておいで。もうすぐ着くから」
「ぅ…」
子どもの力で大人の僕に敵う訳もなく、ましてや小柄なルイスの抵抗を抑え込むなんて簡単だ。
暴れたせいで多少ずれた体勢を抱き直して、近くなった顔に向かって凄むような笑みを向ければ、諦めがついたのかすぐに大人しくなる。
子ども扱いが嫌なのか、単に抱き上げられているのが嫌なのか、はたまたその両方なのかは分からない。
だがこればかりは譲ることは出来ないと、強く抱きしめて寝室の扉を開けた。
ただでさえ退院したその日から屋敷の雑務をさせられて体力が回復していないのだから、無理をさせないに越したことはないはずだ。
「ここに来る前も胸が痛かったんだろう?少し休もう」
「…はい」
僕が書斎にこもっていた間にルイスが整えてくれたシーツの上に、ゆっくりと幼いルイスを横たわらせる。
うっすら赤く染まった頬にそっとキスをして、薄い胸に手を当てた。
かすかに、だけど力強く響いてくる鼓動にほっと息をつく。
ふとルイスの顔を見れば不安そうに瞳が揺れているのが目に入り、安心させるためにもう一度その頬にキスをする。
「ルイスはいつも自分の体を押して頑張ってくれているね。僕はそれが誇らしくもあって、同時に少し悲しかった…君が無理をして僕の手伝いをしてくれることなんて、僕は少しも望んでない」
「…無理なんて、してるつもりは…」
「うん、ないんだろうね、君にとっては。でも僕は君を大事にしたいんだ。ルイスが自分を大事にしないなら、代わりに僕がルイスを大事にする」
「…でも」
「ルイス。君が僕のためになりたいと思ってくれているのは嬉しいよ。でも同じくらいに、僕が君のために何かしたいと思っていることも分かってほしい」
「…」
「今の僕だけじゃない、君の世界の僕もきっとそう思ってるよ。だって僕は君の兄さんだからね」
「…はい」
「よし、良い子だね」
ご褒美だ、と囁きながら丸い額にもキスをする。
嬉しそうに瞳を緩める様子を見て僕としては一安心だが、どうやらまだ不安はぬぐい切れていないらしい。
「…僕、どうやったら元のロンドンの屋敷に戻れるのでしょう」
「…どうだろうね。案外、一休みしたら元に戻っているのかもね」
「そうだといいのですが…兄さん、心配してるだろうなぁ」
「そうだね…きっと心配してる」
「…早く会いたいな」
「ふふ。寂しいかい?」
「…別にそういうわけでは」
「大丈夫、ここにいるよ」
寂しがらなくても、僕もおまえの兄さんだから。
元の世界に戻るまで一人にしないよ。
ずっと傍に、隣にいるから安心して休みなさい。
そんな思いを込めてひんやりした手を握ってやれば、ようやく安心しきったように笑みを浮かべて瞳を閉じてくれる。
寂しくても我慢して僕の顔色を見る癖は、今でも変わっていないように思う。
自分の気持ちを押し殺して僕に尽くすルイスの姿は、悲しいことにもう見慣れてしまった。
君は僕のたった一人、大事な弟だ。
君以上に大事な人なんていない。
だから一人で抱え込まないで、僕にどんな思いも投げかけてほしいんだ。
僕のルイスが帰ってきたらそう伝えてみようか。
穏やかな顔をして眠りに就いたルイスを見てそんなことを考えていると、その体がふわりと浮いた。
そうして次の瞬間、その小さな体が瞬く間に消えてしまったのだ。
だけど何となく、予想はついていた。
ほっとしたような幼いルイスの顔を見て、もうすぐ彼の世界に帰るんだろうなと、直感的に気付いてしまったから。
まだ気の抜けないモリアーティ家での奉公は続くだろうが、どうか僕を頼って懸命に生きてほしい。
目に焼き付けた幼い弟の姿を思い返しながら、帰ってきているはずの僕の弟を迎えに行くため足早に寝室を出ていった。
(そういえば兄さん、昔の僕は何か失礼をしなかったでしょうか?)
(いや?特別可愛くて良い子だったよ)
(…本当ですか?)
(うん。僕だと気付く前は口調が荒かったけど、それも猫が威嚇してるみたいだったよ)
(猫…)
(猫。昔のルイスは猫みたいに大きくて綺麗な瞳をしていたからね)
(…昔の兄さんは今とそっくりです。綺麗な顔立ちで聡明な方でした。…まさか、自分の半分ほどしか生きていない兄さんにも勝てないとは思いませんでしたけどね)
(おや、そうなのかい?)
(えぇ、さすが兄さんですね。僕の完敗ですよ)
(よく分からないけど、あまり悔しそうじゃないね?)
(だって相手は兄さんですから。むしろ誇らしいですよ)
(ふふ、あまり褒められるのも照れるね)
(事実ですから)
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