【R18】エネルギー、満タン
甘々いちゃいちゃえっちぃ話。
昼間摘んでおいたラベンダーの花を水洗いし、いくつかの花を指で潰しながらティーポットに入れる。
その上から沸かしたての湯を静かに注いで、沈んだ花を浮き上がらせるように軽くかき混ぜるとラベンダー特有の華やかで甘い香りが一面を覆った。
ルイスはその香りに軽く頷き、もう一度だけ掻き混ぜると香りを逃がさないようポットに蓋をした。
温めておいたカップにラベンダーの生花を一つ二つばかり入れて置き、茶こしで越したラベンダーのハーブティーを花開かせるように注いでいく。
ラベンダーの香りを邪魔しないよう、彼の好みである蜂蜜ではなくティーシュガーを少量入れてスプーンで溶かせば完成だ。
顔を上げて時計を見れば、もう日付が変わろうかという時間だった。
「兄さん、入りますよ」
淹れたばかりのハーブティーが冷めないよう急ぎ足で兄の部屋に向かい、了承を得てからルイスは部屋に入った。
中には気だるげに資料に目を通すウィリアムがいる。
「…あぁ、ルイス。どうかしたかい?」
「連日の激務でお疲れのようでしたので、リラックス効果のあるハーブティーを淹れてきました」
「ラベンダーか。ありがとう、ルイス」
ソファに腰掛けるウィリアムの隣にある小さな机に、ルイスはまだ熱いラベンダーのハーブティーを音も立てずにゆっくりと置いた。
ウィリアムは普段と変わらず優雅な微笑みを浮かべてはいるが、その顔には色濃い疲労感が滲み出ている。
大学での教務に加え本来の目的である大義を果たすため、この兄が背負う重圧は計り知れないほどに大きい。
少しでも兄の助けになればと思い日々精進しているが、それでも弟というだけでこの兄の庇護下に置かれていることをルイスは身を持って理解している。
そのことを非だとは思わないけれど、もどかしいと感じるのも事実だった。
だからこそ兄が屋敷にいる際の心身メンテナンスは自分の仕事であり特権だと、ルイスは考えている。
「…ここ数日、ベッドで寝ている形跡がありませんね。このままではお体に障りますよ」
「…どうかな。元々ベッドで寝る習慣はあまりないからね。ソファで寝落ちるのも普段と変わらないよ」
「ならば、どうしてそんなにも疲れているのでしょうか」
「…さぁね、どうしてだろうね」
ルイスが淹れたハーブティーを、うん美味しい、さすがルイスだね、と褒めながらウィリアムは目の前に立つ彼を見た。
周囲に漂う香りを楽しみつつ、戸惑いと不安を顔に乗せる弟を見る。
ここ最近の不調はウィリアム自身、当に気付いていた。
だがそれを顔に出すことはしなかったし、事実モランやフレッドにも気付かれていない。
それでも、やはりルイスには隠せなかったか。
ウィリアムは弟という濃い繋がりに対し、嬉しさとともに若干の苛立ちを感じたことを散らすように、ハーブティーを口に含んだ。
「…僕に出来ることはありませんか?」
「…そうだね、あるといえばあるけれど」
「!な、何でしょうか?」
何でもします、と期待に瞳を輝かせるルイスの姿にウィリアムは苦笑する。
自分も日々の雑務で忙しくしているだろうに、それでも兄に尽くそうとするその姿は嫌いではない。
彼の中での優先順位が一番高いのは自分なのだと、優越感に浸ることすら出来るのだ。
懸命なルイスの姿に、ウィリアムは普段よりも艶めいた笑みを浮かべてルイスを手招きした。
「おいで、ルイス」
「…兄さん?」
カップを置き、膝が触れるほど近くにやってきたルイスの腰を抱き寄せるようにウィリアムは腕を伸ばした。
ルイスは抵抗なくウィリアムの腕に引かれるままに足を進め、自らの腹部に顔を埋める兄の姿を見る。
濃いナイトガウンの色に映える金の髪は、仄暗い部屋の中でも綺麗に輝いていた。
「どうしました?」
「温かいね、ルイスは」
「はぁ…」
まるで甘えるようにルイスの腹に頬を付けるウィリアムは、喋る度に動くその様子に彼の生を感じていた。
ふと思いついたように頭を撫でるように動かす手も、規則的に感じられる呼吸の仕草も、戸惑うように自身を呼ぶその声も、昔と変わらない匂いも温もりも、ルイス本人の何もかもがウィリアムの心を満たしている。
上から下に髪を梳く動作に安心を覚えたウィリアムは瞳を閉じ、視界以外でルイスを堪能する。
無条件にウィリアムを信頼しているルイスの腕の中は居心地がいい。
今までに感じていた疲れが少しずつ消えていくようだった。
「…今日の兄さんは随分と甘えん坊のようだ」
「ふふ、そうかもね。でも、たまにはこういうのもいいんじゃないかな?」
「そうですね」
ウィリアムの意図が分かったようにルイスは穏やかに声をかける。
甘えなど誰にも見せないはずの兄の珍しい姿は、まるでルイスだけは特別だと言われているようで気分がいい。
兄によく似た風貌の顔に、兄が持ち得ないだろう幼い笑みを浮かべたルイスは、兄が望むまま体を委ねることとする。
そうしてルイスがしばらく思うままにウィリアムの髪を梳いていると、自分の腰を抱いているその手が上下に絡みついてくるのを感じた。
つい先ほどまでは幼子が甘えるように抱き着いていたそれが、段々と色を持つようにルイスの腰を抱いているのだ。
気のせいかと思い変わらずウィリアムの髪を撫でていたが、徐々に下の方にまで触れてくるのに気付いてしまった。
「…兄さん?」
「ん?何かな?」
「…あの、手が」
ガウン越しではあるが、はっきりと臀部に触れている手に戸惑いながらウィリアムに声をかければ。
特に顔を上げるでもなく手の動きが止まるでもなく、ただ楽しそうにくすくすと笑う声が小さく聞こえてきた。
この兄以外に色事の経験などないルイスは思わず、といったように頬を染めて髪を撫でる手を止めてしまう。
その様子もウィリアムにとっては愉快だったようで、笑う声が一際大きくなった。
「兄さん…?」
「あぁ、ごめんね。最近忙しくて、ルイスが足りなかったみたいだ」
「…そう、ですか」
「だから、これから十分に君を補給したいんだけどいいかな?」
腰かけていたソファから立ち上がり、ルイスよりも少しだけ高い目線のままウィリアムは細身の体を抱きしめた。
弾力のある場所に触れて遊んでいた手は再び腰を抱いており、それでもねっとりと絡むように撫でる仕草は変わらない。
妖艶に微笑んでルイスの目を覗き込むウィリアムの目には、明らかにルイスに対する情欲が映し出されている。
誰に対しても支配者然とするウィリアムが、欲を持って接するのはこのルイスだけだ。
そのことに気付いているのかいないのか、もはやどちらでも良い。
ウィリアムは断れないであろうルイスの返事を悠然として待った。
「…僕も、兄さんが足りなかったので」
「うん」
「…どうぞ、目一杯補給してください」
僕から目を逸らすことなど許さない、とばかりにルイスの目を覗き込んでいたかいあって、頬だけでなく耳も赤らんだ状態のルイスから待ち望んでいた答えが出る。
少しばかり声が震えていたのも愛嬌を感じられてまた一興だ。
ウィリアムの笑みがより深くなり、ご褒美だと言わんばかりに震えた唇にキスを落とした。
深く重ねはしたが、舌を絡ませることはない。
これから先を予感させるようなキスにルイスは肩の力が抜ける。
そしてすぐに唇が離れたかと思うと、欲を引き出させるようにウィリアムの舌がルイスの唇を丁寧になぞった。
ラベンダーの味と香りを生々しく感じ取り、ルイスは何とか逸らさず耐えていた視線を兄から外してしまった。
その仕草にウィリアムはまた笑い、ひとまずは腰と背中を抱いて彼のぬくもりを堪能するのだった。
ベッドヘッドに置かれた小さなランタンにかすかな灯がともる。
目の前が揺らめいて見えるような弱い灯りの中、ベッドの上では二人の体が重なりつつ上下していた。
「んんっ、…ふ、ぅ…っあ」
「ルイス…」
覆うようにルイスの体に被さったウィリアムは、その唇を自分のそれで深く重ね合わせる。
戸惑うことなく舌でルイスの唇を撫でれば、ゆっくりと彼の口腔内へと招かれた。
喉の奥にいるルイスの舌を強引に引き出すように舌を絡めると、おずおずとウィリアムのものと擦り合わさるように動き始める。
一度火がつけば大胆になるルイスの性分は、他ならぬウィリアムによって磨かれたと言っていい。
粘膜同士が擦り合う感触に心地よさを感じながら、合間で愛しい弟の名前を呼ぶ。
唾液で濡れた唇を拭うこともせず、熱の入った目で自分を見下ろす兄を見たルイスは、彼のそのあまりの妖艶さに胸が高鳴った。
捕食者のような目をして見られることに胸が高鳴るなど、ウィリアム以外にはありえないだろう。
ドクン、と鳴った鼓動を鎮めるために、ルイスは今度こそ目を逸らさずにじっと彼を見た。
「兄さん、もっと…」
「…そういえばキスも久々だったね。物足りない?」
「…」
重ねあわせていた手を抜けてウィリアムの首に腕を回せば、必然とその頭を自分に近づけるようになる。
間近で見る緋色の瞳に自分が映っていることを確認して、ルイスはその通りだとばかりに深く頷いた。
決して視線は離すまいと、自然と上目になりながら頷く仕草はきっと兄の欲をそそるに違いない。
ウィリアムが久々というのなら、当然ルイスにとっても久々だ。
それが、深く舌を絡め合わせたとはいえたった一度のキスで満足できるはずもない。
もっと、出来るなら延々と唇を重ねたままで抱き合いたいと、ルイスは言葉にせず視線だけでウィリアムに訴えかけた。
実に分かりやすいその訴えに、ウィリアムは満足したように息をついて再び色付いたルイスの唇を貪っていく。
「ふぅ、ん、ぁっ…んぁ」
我慢できずに鼻から抜けるような声を出すルイスに気を良くし、ウィリアムは目の前で震える睫毛を堪能する。
感じ入ったように目元を染めてキスに応える様子は、見ているだけで十分に快楽を得られる。
ルイス本人はキスの最中にウィリアムがじっと自分を観察していることなど、気付いてもいないだろう。
そんな余裕を与えるほど生ぬるいキスなど、今この場では無粋といっていい。
今後も気付かせるつもりは毛頭ないウィリアムは、ふわりと柔らかい唇と甘く酔いしれるような舌の感触を楽しんだ。
幾度となく角度を変えて、口腔内を蹂躙して、溜まった唾液は全てルイスに飲ませ、それこそ食べ尽くす勢いでキスをする。
そして飲み込めずに唇から流れた唾液を追うため、ウィリアムは長く重ねていた唇をようやく解放した。
「ん、んっ、も、むり…にいさん…っ」
「おや、もうかい?僕はまだまだ足りないけどな」
「…少し、休憩させてください」
「なら、他のところを堪能しようか」
滑らかな頬の感触とともに零れ落ちた唾液を舐めとる。
ウィリアムは荒く呼吸するルイスの耳元にそっと囁きかけ、ねっとりと耳介を味わってからその体を撫でることにした。
片手は胸元を、もう片手は感じて反り返った腰を支えるように抱き寄せる。
途端に震える敏感な体に気付き、ウィリアムは彼の腰を下から上に撫で上げた。
「もう感じてるのかな?」
「…っ、これは、その」
「相変わらず感じやすいね、ルイスは。…キスだけで反応してる」
「んぁ、っ!」
少しばかり硬くなったルイスの中心に気付かないウィリアムではない。
己の太ももで軽く押してやればそれが十分な刺激になって、ルイスは何とも色めいた声を出した。
ウィリアムの首に腕を回していたため、反射的にウィリアムを抱き寄せてその耳元で嬌声を上げる。
その甘く蕩けるような声にウィリアムは満足気に頷き、可愛いね、とルイスの耳元で囁いた。
「さぁどこからがいい?胸、背中、臍、太もも…それとも、さっきから可愛く震えてるここを一番に弄ってほしいのかな?ルイス」
「ふっ…ん、」
「ルイスのいいところを触ってあげるよ。どこを気持ち良くしてほしい?」
「…」
隙間などないほどに体を密着させ、唇で耳を、左右の手で胸と背中を、太ももでその中心を捉えながらルイスに問いかける。
どこを触っても十二分に感じさせることは出来る。
だからこそ自らに強請る姿を魅せてほしいと、ウィリアムはあくまでも優しくルイスを問い詰めた。
ルイスの意思を尊重するよ、という建前などもはや意味を成していない。
それでも、懸命に自分を感じさせてくれる場所を考えるルイスを前にすると、どうにもからかいたくなる衝動を抑えきれないのだ。
微かに震えながら全身に熱を持つその体を抱きしめて、ウィリアムは答えを急かすように焦らした。
夜着越しに探し当てた胸の突起を優しく摘まみ、弾力のある臀部を揉みしだく。
「ぁ、あ、んぅっ」
「どこだい?ルイス…」
「ふぁ、あ…」
「うん?」
「…兄さん」
「うん」
「…兄さんの、すきにしてくださいっ…」
ウィリアムから離れず、それどころかより強く腕に力を込めて抱きしめながら、形の良い耳に唇を寄せて答えを返す。
予想できたはずなのに予想できていなかった答えを返されたウィリアムは、咄嗟にルイスの顔を見ようと顔を動かした。
だがその瞬間、ルイスの顔が眼前に広がったかと思えば、先ほど存分に堪能した甘い唇に再び自分のそれが覆われた。
ウィリアムは軽く触れ合わせるだけで離れた唇を追いかけるでもなく、こつん、と額を合わせてルイスの赤褐色の瞳を見つめる。
「僕は兄さんに抱いてもらうだけで十分幸せです。だから、兄さんのしたいように僕を触ってください…僕はそれが嬉しいし、一番気持ちいい…」
ふわりと妖艶に、それでいてあどけなさを感じる笑みを浮かべたルイスは、甘えるようにキスを強請った。
その可愛らしい我がままにほとんど無意識で応えると、嬉しそうにまた幼いキスで返される。
しばらく啄ばむように唇を重ねていると、段々とルイスの言葉が思考の中に溶け込んでいくのをウィリアムは実感した。
あぁもう、どうして僕の弟はこうも健気で可愛いんだろうか。
抑えきれない感情が体中から溢れ出すのを感じたウィリアムは、子ども染みたキスから一転、深い深い粘膜同士を擦り合わせるキスを再開した。
「ん、んん、ふっ、あ、ぁんっ」
「ルイス…ルイスっ…」
「ぁ、に、にぃさ、んぁ、っあ」
「あまり僕を挑発しないでくれないか、ルイス…!」
その甘い唇をどれだけ存分に貪っても一向に満たされないが、ひとまず背中を抱いていた手を離してルイスの肩をベッドに押し付ける。
キスだけで酔いしれたように呆けるルイスを見下ろしながら、着ていた夜着を下着ごと手早く脱がせて遠くに放った。
勢いで臍上あたりまで捲れたシャツをそのままに、ふるん、と揺れるルイス自身を根元から緩急を付けて扱いていく。
思わず力が入ってしまったかと思ったが、どうにも衝動が抑えられない。
珍しくその顔から余裕がなくなったウィリアムに気付くことなく、ルイスは兄の腕の中で甘い嬌声を上げ続けた。
「やっ、そこ、んぁあ、ぁ、駄目、兄さん、にいさぁんっ」
「気持ちいいかい?ルイス」
「んっ、んんぅ」
「声は我慢しちゃ駄目だって言ってるだろう?」
「ふぁ、っあ、だ、だって、ぁああぁ、ぁんっ」
込め過ぎた力すらも快感として拾ったらしく、その顔に恐怖の感情は一切存在しない。
そのことに安堵したウィリアムは、尖端から零れ落ちてくる滴をルイス自身に纏わせるように塗り広げていった。
摩擦の少なくなったそれは扱いやすく、どんどんと熱を持って膨張していく。
限界が近いであろうその様子を手のひら越しに感じ取り、ウィリアムは声を我慢しようと唇を噛みしめるルイスの額にキスを落とした。
そしてルイスの体に入っていた力が抜ける瞬間を見逃さず、その瞳を覗き込みながら微笑んだ。
「ルイス、もう少しだけ我慢できるかい?」
「ぇ…は、はい…」
「一緒にイこうか」
「…!は、はい!」
達する寸前に我慢を強いるのか、と一瞬だけ気落ちしたルイスだが、その言葉を聞いた瞬間すぐさま嬉しそうにウィリアムに抱きついた。
普段のウィリアムはルイスがどれだけ抵抗しようと、まず真っ先にルイスをイかせようとする。
自らの手でルイスの体を弄り、己の手で感じ入ったルイスを見ることが、ウィリアムにとって何よりも強い快感になるからだ。
そしてルイスには何不自由なく、本人が感じているタイミングでイかせようとするのが常だった。
そのことに不満を感じないはずもないが、支配者たる兄の性質を考えれば仕方ないことだと、ルイスは自らに言い聞かせてきた。
だが今日は、ルイスに我慢を強いてでも共に果てようと提案してきた。
これが嬉しくないはずもなく、ルイスが手を伸ばして兄自身に触れようとすれば、既にそれは十分に熱く硬くなっている。
自らの体は喜んで差し出すが、兄の体に自ら触れることなど滅多にないルイスは、少しだけ驚いたように目を開かせた。
「兄さんも、感じてるんですか…」
「こんなに可愛いルイスを見て、感じない方がおかしいよ」
「ぇ、んんっ」
ウィリアムはルイスの出したものでたっぷりと潤った指を、更に奥まった場所へと進めていく。
弾力のある場所を押し広げて進めて行けば、まだ硬く閉じた目的の場所に触れ当たった。
まずは中指を一本だけ、ゆっくりと襞を広げるようにしてから中に挿入する。
この程度ならば苦痛なくほぐせるはずだとルイスを見れば、変わらず蕩けた表情でウィリアムを見上げているのが目に入る。
そのまましばらくは一本だけで念入りにほぐし、徐々に二本、三本と質量を増やしてみせれば、先ほどとは違う顔をしたルイスがいた。
ウィリアムは初めてルイスを抱いたときから、挿入する場合は一際丁寧にルイスの体を弄っている。
傷一つ付けてなるものか、という兄としてのウィリアムのプライドゆえだ。
現に今までの情事でルイスには怪我をさせたことはないし、無意味に泣かせたこともない。
だから今のこの表情も、おそらくはそうなのだろう。
「兄さん…まだ…?まだですか…?」
「もう欲しいかい?」
「ん、はい…早く」
そう言って足を大きく広げたルイスが意図するのは、ウィリアムが少しでも挿入しやすいように、という欲望からだろう。
後ろだけでも存分に感じられるルイスにとって、時間をかけたこの作業はある種の苦痛だったに違いない。
その証拠に今にも達しそうなルイス自身が、彼の臍を中心に小さな溜まりを作っていた。
「よく我慢したね」
「ふぁっ」
健気に我慢していたルイス自身を労うように、それと同時にからかうように、ウィリアムはちゅうと啜るようなキスをした。
案の定、一層大きく震えて大きな滴を零したそれにウィリアムは笑みを深める。
「や、兄さんだめっ…一緒にイくって、言ったじゃないですかぁ…!」
「あぁそうだった。ごめんね、つい」
ウィリアムは改めて白く細い足を片方だけ肩に抱え、自身をゆっくりとルイスの蕾に近づけた。
敏感な粘膜が触れ合うだけで小さな快感が走る。
なるべくルイスの負担がないよう、ゆっくりと時間をかけてウィリアムは腰を進めていく。
それがどうにもじれったいのか、ルイスは肩に乗せられていない足をウィリアムの腰に巻きつかせては先を強請る。
赤らんだ頬と潤んだ上目で中心を震わせながら強請るその姿に、特別思うことがないわけではない。
だがこればかりは譲れないと、ウィリアムは自身とルイスの内部を馴染ませるようにゆっくりと挿入する。
自分を傷つけないよう慎重に挿れようとする兄の考えは分かっているが、それでも焦らされているように感じてしまう。
ルイスは唇を噛みしめて、もどかしいまでの快感をやり過ごそうと目を閉じた。
「ルイス」
「…兄さん」
「動くよ」
目を閉じて自分の中に押し入ってくるそれを全身で感じていると、不意にその動きが止まる。
奥まで挿入った、とルイスが気付くのと同時にウィリアムから声をかけられた。
最初は時間をかけて、粘膜を傷つけないように優しく擦り合わせる。
それから段々と擦り合わせる動作が早くなり、一つになっているところを中心に、全身が性感帯になったように敏感になる。
ルイス自身の先走りとウィリアムのそれとで随分と滑りが良くなり、ルイスは苦痛を感じることなくただひたすらに快感を得た。
それはウィリアムも同様で、全体を包み込むように絡みついてくるルイスの中で十分すぎるほどの快楽を感じていた。
「んぁ、あ、ぅんんっ、あぁ」
「っは、ルイスっ…」
「に、にぃさ、んぁぅ」
「ふふ、そう、だね…これがすきだったね、ルイスは」
「あああぁっん」
どこか一点を突くよりも、内側の粘膜を思う存分ウィリアム自身で擦ってもらう方がルイスはすきだ。
それは勿論ウィリアムも知っていて、中を掻き混ぜるように大きく擦り上げれば一際甲高く嬌声を上げるルイスを特に気に入っていた。
ウィリアムは変わらず震えているルイス自身に触れることなく、後ろだけでイくよう尚も激しく腰を押し進める。
それを苦とも思わず、自分の中にウィリアムがいて、その熱量で彼が感じていることが伝わってくることに、ルイスは溢れんばかりの幸福を感じていた。
「そろそろ、かな」
「に、にぃさっ、んんっ」
恍惚したようにウィリアムを見上げるその顔を見て、さすがに彼の限界が近いことを悟る。
縋るようにウィリアムの背に腕を回していたルイスの声に合わせて、嬌声だけをあげ続けていたその唇を優しく塞ぐ。
甘い感触を楽しみながらウィリアムがルイスの最奥へと自身を突き入れれば、耐え切れなかったようにルイス自身から乳白色の液体が溢れ出た。
重力に逆らわず臍の溜まりを更に大きくするように垂れていく様子に、ルイスは感覚で気付く。
その些細な刺激すらも快感と捉えるほど、今の彼は全身が性感帯のようなものだった。
小さく跳ねるように震えたその体を抱きしめながら、ウィリアムは達した後の余韻で蠢くルイスの中を堪能してから、己の欲をその中に吐き出していく。
一滴残らず注ぐため、繋がった場所をより密着させながら全てを出しきる。
そのあまりの快感に目を閉じて耐えていると、ふとルイスからの視線を感じてすぐさま目を開けた。
「…兄さん、気持ち良かったですか…?」
「…勿論。ルイスはどうだった?」
「…気持ち、良かったです…」
兄さん、兄さん、と先ほどまでの妖艶さと弟らしいあどけなさという相反する雰囲気を纏い、ルイスは微笑む。
ウィリアムは彼へ根付いている愛しい気持ちを抱いたまま、ルイスの頬に自らの頬を合わせては事後の余韻に浸るべくじゃれていった。
(僕の補給、出来ました?)
(どうだろう、まだまだ足りないかな)
(…なら、満タンになるまで補給してください)
(…後悔はしないね?)
(後悔なんてしません。僕もまだ兄さんの補給、十分に出来ていませんから)
(ふふ、そうかい。じゃあ遠慮なくいただこうかな)
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