【R18】ルイスはウィリアムとアルバートの愛が欲しい
ルイスに「激しくして、痛くして」とねだられたウィリアムとアルバート兄様がその通りにするけど、結局ルイスが怖がるからそのあとで甘やかしえっちをする話。
ルイスが初めて誰かに抱かれたのは十四の頃で、相手は実の兄であるウィリアムだった。
実の兄弟かつ同性同士ということが禁忌であることは知ってはいたけれど、ウィリアムと一つになれることはルイスにとって何よりも嬉しいことであり、欠片ほどの罪悪感を持ったことすらない。
そうして日々を忙しく過ごしているうちに義兄であるアルバートに惹かれ、ウィリアムの応援の元、初めて彼に抱かれたのが十八の頃だった。
どちらの兄もルイスにはとんと甘く、経験するのはいっそ驚くほどの快楽と甘美な想いが入り混じったセックスである。
だからルイスにとってのセックスとは甘やかされるものであり、そこには快楽と羞恥とたまに混じる困惑しか存在しない。
それしか経験してこなかったのだから当然だ。
他人の性事情になど興味はないし、そもそも知る機会すらルイスにはない。
ゆえに今目の前でモランとボンドが話している会話の内容がルイスにとって理解し難いことも極当たり前のことだった。
「セックスって痛いんですか?」
男同士、酒が入れば始まるのは猥談というのは常識である。
モランがそう言っていた。
けれどルイスがウィリアムとアルバートと酒を嗜むときにそういったことが話題にあがることはないので、てっきりモランの中だけの常識なのだと思っていた。
当のモランも二人の兄がバックに控えていることを考えると、わざわざルイスにそんな話題を持ち出すことはない。
しかし今はモランだけでなくボンドもいる場であり、彼の一般常識は世間一般のものとさほど変わりないはずだ。
先程からの会話を振り返ればモランの言っていたように、男同士が揃えば話は下の方に向かうらしいことが分かった。
だからこそルイスは驚いたように声をかけてしまったのだ。
「…なんていうか、ルイス君の顔でセックスっていう単語が出ると驚くね」
「あぁ、俺も驚いた」
別にウブなわけでもないし言葉一つで恥ずかしがるような年でもない。
ウィリアムとアルバート以外には淡白な感情しか抱かないルイスにとって、単語一つで羞恥を感じる方がよほどおかしいと考えている。
そんなに驚くようなことを言っただろうかと、ルイスはもう一度同じ言葉を口にした。
「セックスって痛いんですか?」
「何、どうしたのルイス君。その質問今更すぎない?」
「おまえが一番わかってることだろうが」
「はぁ…?」
ルイスが初めてウィリアムに抱かれたとき、繋がるよりももっと前から充分に時間をかけてウィリアム自らルイスの体を拓かせてくれた。
慣れない行為に戸惑うルイスを慮って、彼は恐怖を感じさせないよう至極丁寧に優しく触れてくれたのだ。
いざ体を一つにするときだって逐一痛みはないか確認されたし、痛みどころかもどかしいほどの快感ばかり体に走っていたから、ルイスが痛みを感じたことなど一度もない。
しかもウィリアムだけでなくアルバートまでも丁寧にルイスの体を慣らしてくれて、感じるのは愛おしい気持ちと溢れんばかりの快楽だけだった。
だからセックスが痛いなどという感覚すら、ルイスには信じられない事実なのだ。
セックスとは甘やかされて気持ち良くしてもらい、気持ち良くなってもらうための手段ではないのだろうか。
「だって異物を体に挿れるわけだから、多少の痛みは伴うはずだろう?そのための器官を持つ女性だってそれなりに痛みを感じる人もいるよ。それが男同士なら尚更だ」
「そうなんですか?」
「何今更カマトトぶってんだよ。おまえが知らないとは言わせねーぞ、ルイス」
「…」
ルイスとウィリアムとアルバートの関係は、仲間内では既に知られている事実だ。
隠しているわけでもないし、計画に支障が出るような真似をする三人でもないため咎める人間はいない。
そして敢えて話題にあげることもないけれど、普段の様子からルイスが受け入れる側なのは明らかである。
だからこそモランもボンドもこの中では唯一そういった経験があるはずのルイスの言葉に違和感を感じているのだ。
二人にそう思われていることに羞恥を感じるでもなく、ルイスは瞬き一つせずボンドの言葉を頭の中で反芻した。
「元は受け入れる器官ではないからね。男同士だと挿れる側もそうだけど、受け入れる側もよほど痛みを感じるはずだよ。慣れてくればそうでもないだろうけどね」
「そう、ですか…」
「どうしたんだよ、ルイス。変な顔して」
「…失礼ですね、変な顔とは」
ボンドの話す内容は正にその通りで、基本的に同性愛は禁忌とされているし嫌悪の対象でもある。
けれど表舞台には出てこないだけで一定数そういった趣向の人間は確実に存在する。
ルイスの場合、同性に興味があるというよりはウィリアムが自分に興味を持ってくれるのならば同じものを返したいというだけだった。
ウィリアムとルイスはお互いにしか経験はないが、アルバートは適当な女で欲を発散していたことがあったはずだから同性愛者というわけでもないだろう。
だが今はそんなことは問題ではなくて、確かに男同士のセックスでは性器を挿入するための器官など存在しない。
男はそういったことを想定して作られていないのだから、排泄器官を無理矢理に受け入れる場所へと仕立て上げているだけだ。
痛みを感じるのが当然といえば当然すぎるのに、今までの経験上ルイスはそんなことを考えたことすらなかった。
受け入れる側のルイスだが、今まではっきりした痛みを感じたことは一度もなかったのだ。
「…」
「…もしかしてルイス君、痛いと思ったことないのかい?」
「……」
「あ、その顔は図星だね。となると…ウィル君もアル君も凄いね、相当優しくルイス君のこと抱いてるんだ」
「…そう、だと思います、けど」
「あいつらも相変わらずだなぁ、ベッドの中でくらい遠慮せずにがっつけば良いのによ。それが愛ってもんだろ、なぁ」
「え?」
「モラン君!」
ルイスがウィリアムとアルバートに優しく抱かれていることに間違いはないだろう。
通常は痛みを感じるはずだというのに、一切痛みを感じたことがないというのが何よりの証拠だ。
ここにはいない二人の兄を思い浮かべ、ルイスが初めてこの場で羞恥を感じて頬を赤らめたのもつかの間、モランの一言にすぐさま顔を上げて目を見開いた。
遠慮とは、愛とはどういう意味だろうか。
「モランさん、今の言葉はどういう意味ですか?」
「気にしなくて良いんだよ、ルイス君!ウィル君とアル君が君のことを大事に思っているならそれが一番なんだから!」
「ボンドさんは黙っててください。モランさん、今の言葉はどういう意味ですか?」
「…そんな大層な意味もねぇよ、気にすんな」
「…つまり兄さん達は、僕とのセックスに満足出来ていないと?」
「そこまで言ってねぇよ!」
「はぁ…モラン君、迂闊すぎるでしょ」
ウィリアムと同じ血が流れているだけあってルイスは頭が良く、一を知れば九までを悟ることが出来る。
何気なくこぼしたモランの言葉を的確に解釈し、思いつめたように目の前の酒瓶を見た。
未だごちゃごちゃ何か言っている二人の声は既に届いていなかった。
「んっ、ぁ…に、にぃさ、そこ、あ、あぁ」
「ここかい?」
「ひ、ぁっ…んゃ、ぁんっ」
「ルイス、こちらはどうだい?」
「んっあっ、あぁっ」
アルバートの寝室、備え付けられた大きなベッド。
上質なマットレスと清潔なシーツに皺を寄せて、邸の主人でもあるアルバートとその弟二人が衣服も纏わず絡み合っている。
唯一ベッドに寝そべっている末弟のルイスの上には左右からウィリアムとアルバートが覆い被さっていた。
それぞれの兄と片手ずつ繋ぎ、ルイスに与えられるのはもどかしさとは対極的なはっきりとした快楽だ。
両胸の尖りの間にある命の証に舌を這わされ、快感で震える太ももを尻ごと揉みしだかれる。
「んっ、や、…だめ、イっちゃ、イっちゃいます、ふっ、ぅあぁ…!」
「構わない、我慢せず気持ち良くなると良い」
「はっぁ、あ、ぁ…」
「ルイス」
あまり堪え性のないルイスをよく知る二人の兄は基本的にルイスに我慢をさせない。
思うままに好きなだけ射精すれば良いと、射精させてあげようと、とびきり甘く囁いてはルイスからなけなしの理性を奪うのだ。
吐き出したくて揺れる性器を横目に見ながら、アルバートは誘惑を乗せた声で赤らんだその耳に愛しい弟の名前を流し込む。
それを合図にウィリアムはとろりと先走りを滲ませるルイスの性器に手を伸ばした。
「ぅあ、あぁっ…!」
「ふふ、上手にイけたね」
「偉いな、ルイス」
「ふっ…ぁ…」
二人と繋いだ手を握りしめ、腰の奥が疼くような快感全てを発散するようにルイスは精を吐き出した。
瞬間、聞こえてくる高い声は耳馴染みが良い。
ルイスから溢れた迸りを余すことなく指で受け止めたウィリアムは、達したばかりで芯を無くした弟の性器をどろりとしたそれごと握りしめる。
続け様に扱いて快感を与えても良いが、まずは両手を握りしめて達したばかりの余韻に浸っている弟の表情を堪能するべく、今はただ手の中に収めているだけだ。
ウィリアムとアルバートはそれぞれ繋いだ手に同じく力を込めて、閉じられた瞳がゆっくりと見開かれるのを待っていた。
「ん、ん…兄さん…兄様…」
薄く開いた唇からは吐息のような音ともに兄を呼ぶ声が聞こえてきて、熟れたベリーのように赤く瑞々しい瞳が二人を捉えた。
色の違う瞳を持つ兄達をぼんやりと見つめ、ルイスは今しがた届けられた言葉について考える。
二人の愛撫によって快感を得てただ欲望のままに達しただけだというのに、ウィリアムもアルバートもすぐにルイスのことを褒めてはひたすらに甘やかす。
今までずっとそうだったのだから何の疑問も抱いていなかったけれど、よくよく考えればおかしな話だ。
褒められる要素はどこにもないだろうに、当然のごとくこの二人はルイスのことを褒めるのだ。
それが嬉しくないといえば嘘になるが、どこか子ども扱いされているようで気になるのも事実だった。
達したばかりで気怠げな雰囲気にそぐわない拗ねた表情を浮かべてみれば、ツンとした唇をそのままアルバートに食べられてしまう。
「んむ、ぅ…ぁ、はっ、ぁ」
「どうしてそんな顔をしているんだい?」
「…いえ…別に何も」
「本当に…?」
「んっや、ぁっ」
唇を吸われて軽く舌を舐められたかと思えば、すぐにアルバートは離れていった。
長兄の濡れた唇が何とも色香に溢れていて、それを濡らしたのが自分だと思えばより一層目のやり場に困ってしまう。
問いかけられた言葉にルイスが上手く返事を出来ずにいれば、ウィリアムがルイスの性器を握り込んだ。
途端に走る快感がもどかしくて、遊ぶように弄られているのが感覚で分かってしまった。
響く水音の原因が自分の精液であることに気付かないほどルイスは経験が浅くないし、それが分かっていて尚わざと音を立てているであろうウィリアムを少しだけ意地が悪いと感じてしまう。
「あっ、…んん、ゃあ、ぁん」
「ルイス、どうして不満げな顔をしていたのか話してくれるね?」
「もしかして、足りないのかな」
快感が、と続けられた言葉に、ふとモランとボンドの言葉を思い出した。
ウィリアムとアルバートがルイスの体に触れることがすきなのは分かりきっていたことで、ルイスが彼らに触れるよりも好きなように自分の体へ触れてほしいと言った方が、兄達の欲望を簡単に煽ることが出来る。
ルイスとしても二人に必要としてもらえるのは喜ばしいことなので、互いの利害が一致しているのならばむしろ進んでその身を兄達に差し出していた。
与えられる快感が足りないことはないし、十分すぎるほどに愛されて甘やかされていると思う。
今まではそれで満足していたし、子ども扱いされていると感じるのも自分が弟で彼らが兄だからだろうと考えていた。
けれど、モランが言っていた「がっつけば良い」という言葉は現状で満足していてはいけないのだとルイスに思わせた。
ルイスが満足していても、ウィリアムとアルバートは我慢しているのかもしれない。
思えば、ただでさえ受け入れるルイスは一人しかいないというのに、自分一人で二人分の欲を受け止め切れているかといえば疑問が残る。
ルイスなりに積極的に誘うこともしてきたけれど、それでも彼らがルイスを手荒に抱くことはなかったしいつだって甘やかされていたのだ。
もっと彼らの思うままに抱いてほしいと、手荒で乱暴になってしまっても受け止めてみせるとルイスは思う。
敏感な性器を弄られていても懸命に口を動かし、ルイスは自分を見下ろす二人に目を向けた。
「んっ…た、足りない、です…っぁ、ん、もっと、もっと激しいのが、いぃ」
返事が返ってくるとは思っていなくて、いつものようにただからかうだけの言葉だった。
けれど予想外にルイスからは震える声で返事をされて、あまつさえその内容が「足りない」ということにウィリアムは驚いたし、アルバートも同様に驚いた。
ルイスの様子をじっと観察しても、いつも通り彼が満足するだけの快感は与えているはずだというのに、まだ足りないというのだろうか。
「我慢しないで…ひどくていいからっ…兄さんと、兄様の、すきにして…ぁ、あぅ、んんっ」
今まで我慢した状態で優しく抱いてくれていたから、一切の痛みを感じなかったのかもしれない。
愛しい兄が自らの欲を抑えて自分を抱いていたのかと思うと、申し訳ない以上に悲しくて仕方がなかった。
優しい彼らのことだからルイスの体を思って優しくしてくれていたのだろうが、それが原因で全てを曝け出すセックスの場でも欲を露わにしてくれなかったのかと思えば、ルイスにとってこれ以上の悲しいことはないのだ。
痛くても苦しくても何があろうとも、ウィリアムとアルバートが思うままに抱いてくれるならそれが一番嬉しい。
モランの言葉を借りるならば、がっついてこそ愛だと、この身を持って実感したいのだ。
ルイスはウィリアムとアルバートの愛が欲しい。
そんなルイスの思惑を知る由もなく、ウィリアムとアルバートは告げられた言葉の意味を理解するために動きを止めた。
全ての神経を脳へと集中させて考えてみても、可愛い末っ子が「激しくしてほしい」と言った事実が変わることはない。
「…ルイス?」
「激しいのがいぃ…痛くていいから、んん…もっと、欲しいです、ぁ」
「珍しいな、おまえがそんなことを望むなんて…何かあったのかい?」
繋いでいる手を握りしめ、アルバートはもう片手でルイスの髪を撫でて、ウィリアムは触れている性器をなぞっていく。
二人の視線はルイスの顔へと向いていて、欲の中に疑問を抱いたその瞳にはルイスの姿が映っていた。
慈しむばかりの接触はルイスの心を温かくしてくれるけれど、気付いてしまえばもっと本能のままに自分のことを貪って欲しいという欲求ばかりが先だってしまう。
ルイスの出方を待っている彼らに希望通り激しくしてくれる様子はない。
それが悔しくも悲しくて、ルイスは繋いでいたいと自らが望んだ手を離して二人の首に腕を回して近づくように促した。
逆らうことなく近づいてくれたウィリアムとアルバートの唇へ順にキスをして、ルイスはもう一度はっきりと口を開いて声を出す。
「激しくして欲しいです…何でもするから、もっと気持ち良くなって欲しい…」
「…満足しているよ、十分に気持ちが良い」
「うん。ルイスに触れていればそれが僕達にとっての快感になると、そう教えただろう?」
アルバートは離された手をルイスの頬に伸ばして擽っていく。
ウィリアムは触れ合ったばかりの唇に指を這わせてその弾力を堪能する。
そうして囁かれた言葉にルイスは納得いかないように首を振って、欲を孕んだ赤い瞳で二人を見上げていった。
「優しくしないで…痛くして、アルバート兄様、ウィリアム兄さん…」
「…困った子だね」
「誰に何を言われたのか知らないけど、後悔しないね?」
「しません…しないから、激しいのがいい」
懇願するようにルイスが二人を見れば、怪訝な顔をした兄の様子が目に入る。
達したばかりで彼らに少し触れられているだけでも僅かな快感が過ぎっていくが、何とか抑えてルイスは流されないようじっと答えを待っていた。
ウィリアムとアルバートの思うままに抱いて欲しいと切に訴えかけるその瞳に絆されたのか、二人は静かに視線を交わして頷き合う。
元よりルイスは自分が決めたことを曲げないし、兄弟の中でもこだわりが一番強い。
言い聞かせてすぐ納得するような簡単な人間なら、ウィリアムとアルバートの興味をこれほど引くこともなかった。
それならば自分が何を言ったのか、その身を持ってして分からせる必要がある。
そうして視線をルイスに戻した瞬間にはギラリと、先程よりもはっきりとした欲望を滲ませた瞳で愛しい弟を見た。
まるで標的を狙う暗殺者のようで、敵を見据える鋭い瞳は素直に美しいと思える。
けれどそんな迫力に満ちた視線を向けられたことのないルイスは、期待と同じくらいの恐怖を実感してしまった。
怯むルイスに気付いていないはずもないのに、ウィリアムはルイスの腕を取ってその半身を起き上がらせた。
「っえ、んっ!?」
「兄さん、切れない程度に慣らしてやってください」
「あぁ、分かった」
「あ、あぁっ!?んっ、や、ぁ、あぁんっ」
ベッドの中では聞いたことのない冷たい声はルイスに益々の恐怖を抱かせて、抱き寄せられたウィリアムの腕に無意識に縋り付いた。
感じる温もりは安心させてくれるものだったのに、後ろから触れるアルバートの手付きはいかにも性急でルイスを驚かせる。
いつもなら丁寧に触れてゆっくりと指でルイスの秘部を準備してくれるはずなのに、すぐにも中を動き回っている指は既に二本は突き入れられているようだった。
いつのまにか潤滑油を纏わせていたらしく、それに加えルイスの体が慣れているおかげなのか傷は出来ていない。
それでもいきなりの刺激は今までに感じたことのない痛みと、それ以上の恐怖としてルイスを襲っていた。
「ふっ、あっ、いぁっ…んゃ、いっ、んん〜!」
「具合はどうです?挿れられそうですか?」
「多少キツイが問題はないだろう。どうする?」
アルバートの指により内側をほぐされるが、不思議と気持ちが良くない。
ゆっくりとルイスの反応を見ながら優しく内側を馴染ませて、気持ちが良いか確認してくれるはずのいつものアルバートはどこにもいなかった。
ただルイスの体を乱暴に拓こうとするその手が何故か怖くて、ルイスがアルバートの顔を見ずにウィリアムを見上げれば、彼も視線を合わせてくれることはなかった。
いつもならその紅い瞳に自分を映して微笑んでくれるのに、今はアルバートが触れる自分の下半身ばかりに目をやっていてルイスを気にかけてくれることもない。
こっちを見て欲しいとその腕に触れてみてもウィリアムがルイスを見ることはなく、伸ばされた手で萎えていた自分自身に触れられた。
普段であれば受け入れる準備の最中に勃ちあがっているはずなのに、今は少し芯が出来上がる程度でしかないそれにルイスが目をやれば、ウィリアムの手で無理矢理に勃たされてる様子が目に入る。
気持ちが良いはずなのにそう感じることは出来なくて、まるで他人事のように薄く染まって先走りを垂らすそれを見て、ルイスは自分で出しているとは思えない喘ぎを口からこぼす。
痛いとは言えなかったし言いたくなかった。
「兄さんが先に挿れてください。その間は僕が見ておきます」
「わかった」
「え、ゃ、んっん…ぃ、あぁっ」
交わされる二人の会話に目を見開いて後ろを振り返れば、アルバートの手によりルイスの尻が開かれてその奥を覗く様子が目に入る。
彼はウィリアムと同じくルイスの顔を見てくれることはなくて、乱暴にほぐした場所だけを見て繋がろうとしているアルバートはまるで知らない人のようだった。
激しくして欲しいと、痛くして欲しいと要求したのはルイスだ。
がっつくというのがどういうものか分からないけれど、おそらくルイスの反応を顧みずに己の欲を満たそうとする今の姿は正しくがっついているのだろう。
確かに激しくて痛みも感じるが、これが愛だなんておよそ信じられなかった。
自分が欲しかったのは本当にこんなものなのだろうかと、恐怖で潤む視界を閉じてウィリアムの首にしがみつく。
ルイス自ら望んだことなのだから痛いも怖いも言ってはいけないし、自分が気持ち良くなくても彼らが気持ち良くなってくれればそれで良いのだ。
自分の体でウィリアムとアルバートが気持ち良くなってくれるのなら、ルイスにとってそれが一番大切なことだった。
そうして覚悟を決めたルイスは、アルバートが己の中に挿入ってくる痛みと滲む快感を何とかやり過ごそうと息を詰める。
呻くような声を出すルイスの耳に、呆れたようなため息が聞こえた気がした。
「…ぅ、うぅ、〜んっ…ぃ、…ふ、ぅ…?」
「…ルイス、わかるかい?」
「ん…ぇ…?ぁ、んん」
耳元で聞こえたウィリアムの声に反応したルイスは瞳を開けて彼の顔を見た。
ちゃんと自分を見ている彼にやっと安心したようにルイスは息を吐いて体の力を抜く。
自分を見つめるウィリアムは眉を寄せて戸惑っているのか怒っているのか、表現しづらい顔をしていた。
その表情の理由を考えるよりも前に、ルイスは感じていた違和感を探ろうと後ろを振り返る。
視線の先ではアルバートが憮然とした顔でルイスを見ていて、ようやく二人とも自分を見てくれたことにこの上ない安心と幸福を実感した。
そうして思い出す違和感の原因は、挿入されているはずのアルバートなのだと気が付いた。
ルイスの気持ちを待つことなくすぐに繋がったというのに、動くこともせずただ内側に収まっているだけだ。
けれど普段ならば挿入しただけでも奥までアルバートの性器でいっぱいになって、その硬さが十分すぎるほど粘膜を刺激してくれるのに、今はそんな感覚を得ることもない。
思わずルイスが「物足りない」と感じていると、ウィリアムから答えを返された。
「中に挿入っている兄さん、いつもと違うだろう?」
「…は、ぃ」
「当然だろう。激しくして、酷くして、痛くしてと言われるままおまえに触れて、私が十分に快感を得られるとでも思っていたのか」
「そ、そんな、つもりじゃ…」
「僕も兄さんも、ルイスが気持ち良くなっていないのに自分だけ気持ち良くなれるはずもない。君が痛がる様子を見て煽られるほど、歪んだ性癖を持ったつもりはないよ」
「んっ…」
ウィリアムの言葉を聞いてから、アルバートは性急に突き入れたときとは正反対にゆっくりとルイスの中から出て行った。
惜しがる様子もなく、やっと異物が出て行ったとばかりにルイスの秘部はすぐさま閉じる。
感じていた違和感と痛みがなくなり、ルイスがふとアルバートに目を向ければ、確かに彼の性器は多少勃ちあがっている程度でしかない。
普段であればルイスが触れなくてもしっかりと勃ちあがっていることを思い出して、ウィリアムとアルバートの言葉に偽りがないことを理解する。
ルイスはただ、我慢して優しくしてくれていたのなら我慢せず思うままに抱いて欲しかっただけだ。
そのためなら痛くても怖くても耐えられると思っていたのに、そんな自分を見ていても兄は少しも気持ち良くなかったという。
ならばどうしたら二人に我慢させることなくセックス出来るというのだろうか。
ウィリアムへもたれるように体を預け、背中を支えてくれるアルバートの腕を感じながらルイスは二人の顔を見た。
「ルイスが僕とアルバート兄さんの愛撫で感じてくれていればそれで良いんだよ。難しく考えなくて良い」
「で、でも…遠慮したセックスではお二人とも満足出来ないんじゃ」
「おや、私とウィリアムがいつ遠慮したというんだい?」
「アルバート兄様もウィリアム兄さんも、僕とのセックスではいつも優しいです。がっついてくれたことなんて一度もありません。…僕は、そんなに魅力がないのでしょうか」
「…ふぅん…なるほど」
大方の予想が付いたらしく、ウィリアムは少しだけ乱れているふわふわした髪を手櫛で整えてあげた。
ルイスはウィリアムとアルバートに文字通り猫可愛がりされており、セックスの最中は優しくされることに慣れきっている。
そうなるようにウィリアムが教え込んできたし、アルバートもウィリアムと同じ嗜好だったから、ルイスにとってのセックスとはそういうものなのだ。
優しくされて甘やかされる気持ちの良い行為がセックスだと、時間をかけて刷り込んできた。
そこに要らない知識を仕込まれた故の暴走が先程の言動に繋がるのだろう。
犯人探しはひとまず止めておくとして、ウィリアムは未だ切羽詰まったように瞳が揺らいでいるルイスを見る。
さっき無理矢理に刺激して勃たせたルイスの性器は勢いをなくしてまたも萎えていた。
「逆だよ、ルイス。君に魅力があるから優しくしてあげたいんだ」
「優しくして気持ち良くなるルイスを見て、私もウィリアムもそれなりにがっついているつもりだよ。そう見えないのなら、気付かないほど君が夢中になっているだけだろう」
「そう、なのでしょうか…」
まだ納得いかないように首を傾げるルイスを見て、相変わらず融通の効かない性格だと再確認する。
けれどその面倒なところも含めてルイスらしいし、それが一層の愛しさを感じさせるのも事実だ。
ウィリアムとアルバートのことで思い悩み、彼らのために自分に何が出来るのかを考えるルイスはとても健気で心をくすぐられる。
ルイスの汗ばんだ首筋に指を沿わせ、そのままうなじの方に手を持っていって自らの元に寄せていく。
そうしてウィリアムはルイスの唇に軽くキスをしてから至近距離で見つめ合った。
「…大事な人に優しくしたいと思うのは自然なことだろう?僕はルイスに優しくしたいし、とびきり気持ち良くなってもらいたい。…それともルイスは、僕が痛がっているところを見て興奮するタイプだったかな?」
「っまさか!兄さんには一切の苦痛すら与えたくありません!」
「ありがとう。僕と同じだね」
「…ぁ」
「兄さんもそうですよね?」
「あぁ」
弟達の密談を見守っていたアルバートはウィリアムの問いかけを皮切りに、ルイスの体を引き寄せ火照って温かみのある肉体を抱きしめた。
先程アルバートに無理矢理貫かれたときには緊張して強張っていたはずの体の力は抜けていて、肉付きは良くないけれど抱き心地の良いルイスの体を堪能する。
アルバートにとって初めての家族で、弟で、愛しい人になったルイスを大事にしたいという気持ちには、アルバート本人でさえ最初は戸惑った。
けれど優しくすればその分だけ自分に懐いてくれて、甘やかせばそれ以上に自分を頼りにしてくれて、そんなルイスを愛しく思わないはずもない。
だからこそアルバートはルイスを抱くときには存分に優しくして、甘やかしながらその体に触れたいと思うのだ。
そうした方が可愛らしくも淫らなルイスを見ることが出来る。
「私の手で綺麗に乱れるルイスを見るためならいくらでも優しくしてやりたいと思う。おまえに対して酷いことも痛い思いをさせたいと思ったこともないな」
「…アルバート、兄様」
「ルイスが痛くても感じる性質ならまだしも、感じるどころかむしろ怖かったんだろう?」
「…」
「だから、今まで通りのセックスをしようか」
「…はぃ」
アルバートの言葉にトクリと心臓が高鳴り、ウィリアムの問いかけにはその通りだと視線を合わせることで返事をする。
ろくに名前を呼ばれることもなく、視線すら合わないまま触れられても恐怖しかなかった。
まるで別人に抱かれているような気持ちすら湧いてきて、こんなつもりじゃなかったのにと後悔すら過ってしまったのだ。
ルイスはいつも通り、今まで通りのセックスをしたいと思う。
それで良いとウィリアムとアルバートも思ってくれているのならばもう何を悩む必要もない。
ようやく納得のいった晴れやかな表情で、ルイスは二人の手を取ってもう一度指を絡めて握りしめた。
「ウィリアム兄さん、アルバート兄様。もう一度、今度は優しくしてください」
ほんのりと染まったルイスの頬に左右からキスを落として、二人はその耳元に了解の意を囁いた。
そうして半端に触れてほぐしたままだったルイスの秘部にもう一度アルバートが指を伸ばし、萎えかけていた性器にはウィリアムの指が絡みつく。
んっ、とルイスが甘ったるい吐息をこぼせば満足したように兄達は微笑んで、いつものように震えるその体を目に焼き付けながらゆっくりと指を動かしていった。
「ふ、ぁ…あ、ぁん」
「ルイス、痛みはないかい?先程は乱暴に挿れてしまったからね…傷はないが、違和感は残っていないかな?」
「ん、んぅ…だ、だいじょうぶ、です、ぁ、あ…きもちいぃ、です…んぁ」
「こっちはどうだい?さっきは無理に勃たせてしまったから嫌だっただろう、ごめんね」
「ふ、ぁ、あぁ…んゃ、んん…ゃ、あ」
慈しむように声をかけ、丁寧にルイスの体に触れるウィリアムとアルバートは至極満足そうだ。
甘く香るフェロモンのような色気は感じ入ったルイスから漂うもので、とろんと瞳を緩ませる表情は何とも可愛らしい。
潤む瞳と同じように力が抜けて開いた唇からは赤い舌が覗いている。
絶えず漏れる嬌声には少しの恐怖も感じられなくて、ただひたすらに快感だけを表していた。
それがどれほどウィリアムとアルバートの欲を煽っているのか、ルイスが知ることはないのだろう。
綺麗な顔に乗った淫らな表情にはとても唆られる。
思わず生唾を飲んでそれぞれ指を動かせば、快感に弱い体からは顕著な反応が出てきてますます唆られた。
アルバートが指をルイスの奥まで突き入れると、もっと奥まで来て欲しいとばかりに粘膜が収縮している。
熱く絡みつく襞をマッサージするようにやんわりと刺激して、空いた隙間にもう一本の指を挿し入れた。
まるで喜ぶように強く絡みついてくるルイスの内側は、更なる刺激を求めてアルバートの指をきゅうきゅうと締め付けては奥へと引きずり込もうとしている。
指先だけの快感にそっとほくそ笑んだアルバートは、可愛らしく鳴いているルイスの唇に噛み付いては舌を絡ませ合い、溢れた唾液をそのまま飲み込むように促した。
「ふっ、は、ぁ…んっん、ぁあんっ」
「もう少しで準備が出来る。そう焦るでないよ、ルイス」
「に、にぃさま、んっあっ、あ!」
唇が触れ合うほどの至近距離で見つめ合う兄と弟を見て、ウィリアムはゾクゾクするような快感を覚えた。
美しい兄と可愛い弟の耽美な様子はいつ見ても心地が良い。
愛おしい気持ちのまま触れていた指を動かしていると、ルイスの性器はピクンと反応してたらたらと精液を溢れさせていった。
先端を刺激しつつ根元の部分も弄っていけば薄い腹筋も少しだけ動いていて、ウィリアムの手に擦り付けるようにルイスの腰が揺れている。
もっと気持ち良くなりたいと体で訴えかける弟の期待に答えるべく、もう片手でツンと尖っている胸の飾りに手を伸ばした。
すぐさま震える肩に顎を乗せて、色付いた耳に舌を這わせて直接声を流し込む。
「ねぇ、ルイス。どこが気持ち良いんだい?」
「ひっ、あ…ぁ、ん、んぅ、やぁんっ」
「ルイス…?どこが良いんだい?」
喘ぐばかりで求める答えを返してくれないルイスを愉しげに見つめ、ウィリアムは彼の性器を勢いよく扱き、胸の尖りには摘まみ上げるような刺激を与える。
敏感な二ヶ所を同時に弄られ、かつアルバートに内側をほぐしてもらっているこの状況、ルイスにとっては天国とも言えるほどの快楽だろう。
跳ねる体と甘く鳴いている声、そしてとろりと流れている少しの精液がその証拠だ。
ウィリアムはルイスの体を思うままに愛でながら、その耳に歯を立ててねっとりと舐めていった。
「っん、あっ、も…ぜ、ぜんぶっ…ぜんぶきもち、いぃですっ、ひぁっ!」
「ふふ。よく言えました」
「ウィル、そろそろ良さそうだ。どうする?」
「兄さんが挿れてあげてください。さっきがさっきですから」
「では遠慮なく」
先程まで恐怖に染まっていたルイスの表情は、ただただ快楽とこれから先の期待だけに満ちている。
嫌な記憶は上書きしてしまうのが一番だ。
ルイスがアルバートに対し負の感情を背負うことのないよう、ウィリアムはしっとりと温かい体を後ろから抱きしめた。
そうして近付いた頬に淡いキスを落として、アルバート兄さんにちゃんと気持ち良くしてもらおうか、と優しく言い聞かせる。
その言葉の意味を理解しているのか分からないが、思考のとろけたルイスは同意するように頷いた。
そんな弟達を目にしたアルバートはルイスの秘部に挿れていた指を全て引き抜き、弛緩したその太ももを抱えて今まで散々に愛されていた下半身を見やる。
震える性器は勿論のこと、うっすらと開いた秘部は誘い込むように動いていた。
随分と官能的な光景に思わずじっと見つめているとその視線に気付いたのか、ルイスがもがくように体をよじらせては目の前のアルバートに腕を伸ばす。
「兄様…ん、も…早く…」
「…そうだな、焦らしてすまない」
肩に回された腕を愛おしく思いながら、アルバートは視線をルイスの顔へと向けていく。
そうしてしっかりと勃ちあがった性器でルイスの秘部をなぞっていき、ゆっくりとその内側へと挿入していった。
「んっあっ、あぁっ…!」
しっかりと奥まで挿入すれば、ルイスに響くのは先程とは比べ物にならない快感だ。
痛みなど一切ないし、奥まで届く熱くて硬いアルバート自身が粘膜を刺激して気持ちが良い。
ウィリアムの目論見通りルイスの体の記憶は上書きされて、今のルイスは抜群の快感を与えてくれるだろうアルバートのことしか考えられない。
ルイスの内側が自分に馴染むまで時間を置いてから、徐々にアルバートは収縮する粘膜に合わせて腰を動かしていく。
そこは待ち望んでいたとばかりに兄の性器を締め付けて、それに煽られるようにアルバートはそれこそ激しくルイスの中を蹂躙していった。
自分を抱く彼に縋り付きながらルイスは甘い嬌声をあげ、与えられる快感に酔いしれる。
そんな弟を腕に抱き、ウィリアムはまたも胸の尖りとその性器へと手を伸ばした。
胸の左右でぷっくりと形作っているそれはウィリアムの指を楽しませ、震えながら今か今かと射精したがる性器を助けるように爪で穴を抉じ開けるように引っ掻いた。
アルバートから与えられる快感に夢中になっていたルイスは突然の強い刺激に目を見開き、背中を反らせてそれこそ泣くように精を吐き出してしまった。
「ひ、ぁっ…んゃ、な、なに…!?」
「っく…!…ウィル、先に声をかけてくれ、こちらも保たない」
「ふふ、すみません」
「あ、ぁ…んっ…ふ、ぅぁ…」
驚いて後ろを振り返るルイスだが、達した瞬間に蠢いた内側の快感によりアルバートの精液がじんわりと広がっていくのを感じて目を閉じる。
射精しても存在感のあるアルバート自身に思わず腹部に力が入るけれど、そのせいで奥の奥まで彼の吐き出したものが浸透していくような心地がする。
気持ちは良いけれどあまり経験したことのない感覚に、ルイスは後ろで自分を抱きしめているウィリアムに背中を押し付けた。
アルバートはアルバートで突然の締め付けで乱れた呼吸を整えるべく、ルイスの腰を掴んだまま動いていない。
そんな二人の様子をウィリアムは実に愉しげに見守っていて、ゆっくりとルイスの中から出て行くアルバートを見てから腕の中の体をベッドへと押し倒した。
自らも射精してアルバートの欲も受け止めたばかりのルイスはウィリアムのなすがまま、天井を背景に彼の顔を見上げるばかりである。
「にぃさん…?」
「少しだけ付き合ってくれるかい、ルイス」
「はぃ…もちろん…」
もう一度挿入されるのかとルイスは抵抗なく足を開くが、ウィリアムが触れたのは今しがたアルバートに愛されたばかりの部分ではなかった。
達して萎えた性器を手に取られる感覚がして、ルイスは視線を己の下半身へと向けてみる。
くたりとした自分自身とは対照的に、ウィリアムの性器はしっかりと勃ちあがっていてすぐにも挿入出来そうだった。
あぁ、欲しいなと、ルイスがそう思ってほとんど無意識に手を伸ばして彼のそれに触れてみると、内側で感じたアルバートと同じくらいに熱くて硬いことが分かる。
喉を鳴らして何となく撫でていると、ルイスの手ごとウィリアムが自分の性器を握り込んだ。
そこでようやくルイスはウィリアムの意図を理解して、撫でるのではなくしっかりと指を動かして刺激していった。
指先で先端をぐりぐりと押さえつけるように愛撫すれば、自分を見下ろしているウィリアムの顔が近寄ってくる。
それに気付いたルイスは少しだけ唇を開けて、落とされるキスを受け入れた。
「ふっ、ん…ん、んむ…ふ、ぁ」
「っは…」
しばらく舌を絡ませて互いの唇を堪能し、その間もルイスはウィリアムの性器への手淫を止めずに続けていた。
粘膜同士の触れ合いはどうしてもこんなにも気持ちが良いのだろうかと、纏まらない思考でルイスが夢中になってキスを受け入れていればゆっくりと唇を離される。
けれども距離は変わらなくて、自分を見下ろして気持ちの良さそうな顔をするウィリアムを見つめながらルイスは口角を上げて微笑んだ。
美しいウィリアムが自分の手で気持ち良くなっていることが嬉しくて、ルイスは少しだけ指に力を込めた。
「っ…ルイス、そろそろ…」
「…はぃ…兄さん、イってください…」
ウィリアムが眉をしかめ、堪えるように表情を変えたかと思えばルイスの手が彼の性器から離される。
てっきり自分の手に吐き出してくれるものだと思っていたルイスが首を傾げていると、熱いものがルイス自身に注がれてきた。
視線を落として見てみれば、ウィリアムが吐き出した精液は全てルイスの性器にかかっている。
「…兄さんの…」
「ふふ、ルイスが出したものと混ざってしまったね」
「…ふふ、一緒になっちゃいましたね」
一連の動作でまたも芯を持って勃ちあがろうとしていたルイスの性器は、ウィリアムから放たれた真っ白い精液で汚れていた。
ウィリアムの欲望でルイスが汚れているというのは随分と唆られる、厭らしい光景だとアルバートは評価する。
愛しい弟達が甘美に睦み合う様は実に良いものだ。
アルバートがそう考えて悦に浸っていることなど露知らず、ルイスは自分の精液と混ざり合うウィリアムのそれを指に取り、くすくすと笑いながら舐めとっていった。
にがいです、と言いながらも嫌がる様子のない弟を見て、ウィリアムとアルバートはその体を同時に抱きしめる。
愛など欲さずとももう既に十分すぎるほど貰っていた。
そのことにようやく気付いたルイスは自らも彼らを抱き返そうと、気怠い体を推して兄の肩に腕を回して縋り付いた。
(モラン君はさぁ、あの三人に関してはもっと慎重に言葉を選ぶべきだと思うよ)
(…分かってるよ、分かってるっつの)
(ルイス君はルイス君である意味世間知らずだからね。彼、ウィル君とアル君以外に何かを教えてくれる人いなかったんだろ。それってつまりウィル君の良いように育てられたって訳だよね)
(多分な)
(そんなルイス君にモラン君の余計な知識植えつけるなんて…後で何があっても僕はフォローしないからせいぜい頑張って)
(マジかよ!あの場にいたんだからおまえも同罪だろうが!)
(僕はフォローしようとしたよ。でもお役に立てなかったからね、僕の力はないものと思っておいて)
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