【R18】一周回って頭が悪い


ウィリアムのために対面座位を、アルバート兄様のために騎乗位を練習するルイス。

ルイスは頭が良い。
ウィリアムに似て、と言うには二人の繋がりは親子ではないのだから、ウィリアムと同じように、と言った方がよほど的確かもしれない。
身内に頭脳明晰な人材が豊富に揃っているせいで埋もれがちではあるが、とにかくルイスは頭の回転が並より優れており、教えられたことは可能な限り理想に近付けた結果を出してしまう。
それを当然のことのようにやってのけるし苦を見せることもないのだから、周囲の人間もルイスはそういう性質なのだと認識していた。
加えてルイスが一つのことにのめり込んでしまう性質を持っていることも、昔からの仲間であるならば知れ渡っていることである。
ルイスは頭が良い。
けれども一周回ってある意味で頭が悪いというのも、昔からの仲間であるモランとフレッドにはよく知った事実であった。

「モランさん、フレッド、無礼を承知で頼みがあります」
「何だ、珍しいな」
「ウィリアムさん絡みですか?」
「えぇ。ですが兄さんからの命ではありません。あくまでも僕個人の依頼です」
「ルイスさん個人の…?」
「はい」

姿が映るほど綺麗に磨かれた眼鏡の奥にはモランとフレッドが忠誠を誓った人間とよく似た瞳が在る。
その色はこちらの方が少しだけ深みを帯びていて、まるで上質なワインのように透き通りつつも豊かに波打っていた。
誰かに頼ることをせず、極力自分のことは自分でこなす主義のルイスから出た言葉は二人に少しの驚きを与える。
ウィリアムとアルバートに関することならばルイス一人で遂行したがるが、一人では手に負えないと判断したならば仲間の協力を仰ぐのがルイスだ。
兄達に迷惑をかける以上にルイスが嫌うことはない。
だから今回もウィリアムとアルバートに関することで何かあったのだろう。
それ以外にルイスが誰かを頼ることはないのだから。
モランとフレッドは表情を引き締め、何を依頼されるのかと神妙な顔付きでルイスを見た。

「お二人の対面座位と騎乗位を見せていただけますか」
「…」
「…」
「対面座位と騎乗位をみ」
「聞こえてる。聞こえてるから二度も言わなくて良い」

普段と変わらずきりっとした顔付きと薄く色づいて艶の良い唇から出た言葉は、モランとフレッドに多大なる頭痛を与えてくれた。
幻聴かと思いきや二度も同じ言葉を繰り返されたのだからどうやら現実らしい。
腕を組んで天を仰ぐモランと、俯いて額に手を当てるフレッド。
そんな二人を気にすることなく堂々たる姿勢で、ルイスは目の前のソファに礼儀正しく座っていた。

「…何があった?」
「先日、ウィリアム兄さんとアルバート兄様の贔屓の体位を知る機会がありました。兄さんは対面座位、兄様は騎乗位を好むということです」
「…知りたくなかった、な」
「同感だぜフレッド」

恥ずかしがる様子もなく、変わらず堂々とルイスは話していった。
つい先日、ルイスはウィリアムとアルバートと三人で体を重ねた後にうとうとと微睡んでいた。
満たされた気持ちのまま眠りたいような、けれどもまだ二人と目を合わせて起きていたいような、そんな相反する気持ちでルイスはウィリアムの腕に抱かれて目を閉じていた。
しかしウィリアムとアルバートから存分に愛された体はやはり疲労を感じていたようで、兄達の目からすればルイスはぐっすりと眠っているように見えたのだろう。
他愛もない二人の声を夢心地のまま聞いて段々と意識を沈めようとしていたところで、彼らの会話の内容が鮮明に届いてきたのだ。

   僕個人としては対面座位が好ましいですね、間近でルイスの顔を堪能できる。
   なるほど、悪くないな。縋り付く腕には唆るものがある。
   そうでしょう。兄さんはどうです?
   ふむ…騎乗位はルイスの頑張りがよく分かる上、感じている肉体もしっかり見えるから気に入っているな。
   あぁ、良いですね。不慣れながらも頑張る様は唆られる。

ぼんやりとそんな会話を聞いていると本格的に眠気が勝ってしまい、ルイスはそのままウィリアムの腕の中で寝入ってしまった。
穏やかな寝息を立てるルイスの髪を撫でながらもウィリアムとアルバートはしばらく起きていたらしい。
そこから先の話は知ることは出来ないけれど目が覚めても二人の会話は頭によく残っていて、ウィリアムは対面座位を、アルバートは騎乗位を好んでいると思いがけず知ることが出来たのだ。
どちらも受け入れる側であるルイスが主体となって動く必要がある体位で、かつ互いの顔もしっかりと見える。
ルイスとしてはどちらかの顔が見えるのであればセックスの体位にこだわりはなく、これまでは二人の思うままに抱かれていたが、その二人に実は贔屓の体位があるというのならば話は別だ。
対面座位も騎乗位も経験はあれど、そもそもルイス自身が主体になって動くということすら滅多にない。
経験があるだけで熟れているほどでもないし、ウィリアムとアルバートに言われるがまま腰を振っていただけだから恐らく満足感とは程遠いだろう。
ならばルイスがやるべきことは一つ、対面座位と騎乗位での経験を積むことである。
だがウィリアムとアルバートのための行為をその二人とともに練習するというのもおかしな話だし、そこらの誰かにルイスが抱かれることを二人の兄が許すはずもない。
そこで白羽の矢が立ったのがモランとフレッド、同士である二人だった。
彼らならば兄達と三人での関係を知られているし今更恥ずかしがるような間柄でもないと、ルイスはそう考えている。

「お恥ずかしいのですが、僕はあまり対面座位にも騎乗位にも技術面での自信がありません」
「おまえはまず今のこの状況を恥ずかしがれ」
「お二人のために極秘で経験を積もうにも、執務を投げ出して町へ繰り出すわけにもいきません」
「それは止めてください、ウィリアムさんとアルバートさんのためにも止めてください」
「そこで考えたんです。モランさんとフレッドならば良いのではないかと」
「…何がだよ」
「…あまり良い予感はしない、けど」

淡々と話すルイスに羞恥は感じられず、むしろウィリアムとアルバートのために在ろうとする弟そのものの姿だった。
話している内容は不健全極まりないが、本人は至って真剣そのものである。
これが無音声であるならば、今後の計画についてきめ細かな話を進めていると思われることだろう。
そう思えるほどにはルイスは真面目な顔つきと声色をしていて、これが最善だとばかりに一回り年上のモランと自分よりも年若いフレッドに頼み事をしているのだ。

「お二人とも、形だけで良いので対面座位と騎乗位をしていただいても良いですか?」
「断る」
「お断りです」

そうしてルイスは先程と似たような言葉を口に出す。
ウィリアムとアルバートの秘密裏で経験を積むことが難しいのであれば、まずは視覚から学びを深めるのも一つの手だと考えたのだ。
だが他の人間のセックスを見る機会などないし、正直見たくもない。
要は上に乗った人間がどういう動きをすれば快感を与えられるのか分かれば良いのだから、モランとフレッドに服を着た状態で擬似セックスをしてもらえば良いとルイスは考えたのだ。
ルイスは頭が良い。
けれども一周回って頭が悪いと、モランとフレッドは即座にそう再評価してルイスの言葉を即却下した。

「ふ…そう言うと思っていました」
「思った時点で口にしなきゃ良いだろうが」
「モランの言う通りです。いくらルイスさんの頼みといえど聞けません」

呆れて物も言えない、というような表情をしておきながら口を動かす二人を見て、ルイスは想定内だと瞳を伏せる。
この二人がそういった関係でないことは百も承知だし、そうであれば擬似セックスなど了解するはずもないだろう。
勿論見せてくれるのであればそれが一番手っ取り早いのだが、ルイスの本命は別にある。
人間の心理として、一番最初の頼まれごとを断ってしまうと良心の呵責から次の頼まれごとに対してハードルが下がって了承しやすい傾向にあるという。
無理難題を断られても本命は二つ目の依頼であり、一度断った手前、簡単に頷いてくれることだろう。
ルイスがウィリアムから教わった心理学を元に話を進めていることなど露知らず、モランとフレッドは一瞬でも想像してしまった己の濡場を振り払うべく頭を振っていた。

「ではお二人とも、対面座位と騎乗位をする僕の練習相手になってください」
「断る」
「お断りです」
「…」

始めに難題を押し付けておけば、次の要求への認識が甘くなって通りやすくなる。
ウィリアムから教わったはずの心理学だというのにこの二人には通用しないというのだろうか。
ルイスは思わず目を丸くして目の前で心底嫌そうな顔をしている二人を見た。  

「さっきよりハードル上がってんじゃねぇか、冗談は休み休み言えよ」
「本当に…それならまだモランとどうこうした方がマシです」
「え、では見せていただけますか?」
「え、嫌ですけど」
「…」

上げて落とされたルイスは憮然とした表情でフレッドを見た。
そのフレッドは気まずそうな顔をしているけれど、ルイスの頼みは断固拒否するという姿勢を崩していない。
モランは言葉の通り、厄介な面倒ごとに巻き込まれたというような顔で煙草に火を付けた。
擬似セックスより簡単だろうとルイスが本命にしていた頼みごとは、モランとフレッドにとっては最初の頼みよりも遥かに厄介な案件そのものだ。
ルイスの練習相手、それもセックスの体位についての練習相手など考えただけで怖気が走る。
これが体術やナイフ術や銃の扱いならば受けて立ったことだろう。
だが内容が内容であり、執務の合間にするとなればモリアーティ家所有の屋敷のどこかを想定していることは間違いない。
万一にでもウィリアムかアルバートにその練習風景を見られたとなれば、その結末は明白すぎて想像するのも億劫なほどだ。
弟としても想い人としてもルイスを溺愛している二人はルイスの全てを知ろうとしている。
そうした上で、ルイスの全てを所有したがっているのだ。
秘密を作ることも許可していないし、ルイス一人での練習ならまだしも周りを巻き込んだ練習など絶対に許すはずがない。
過保護で愛情深く歪んでいるウィリアムとアルバートの顔を思い浮かべ、モランは紫煙をゆっくりと吐き出した。

「別に何をしていただくでもありませんよ。寝ていただくか座っていただくかすれば、後は僕が勝手に上に乗るので」
「無理」
「…フレッド、短時間で良いので付き合ってくれませんか?」
「すみませんが…」

今二人の前にはルイスしかいないというのに、何故だか背後にはウィリアムとアルバートの姿が見えるようだった。
何もせずただ体だけを貸してくれれば良いのだと言われても、貸した体にルイスが乗り上げるとなれば話は別だ。
想像だけでも十分すぎるほどに兄達の報復が恐ろしかった。
勝手に町で練習を積もうとすることがウィリアムとアルバートの怒りに触れることは理解しているようだが、それが身内でも通ずるとは思っていないところがルイスらしい。
ルイスの様子から察するに、モランとフレッド相手ならば感じ入ることなど一切有り得ないと考えているのだろう。
それはモランとフレッドも同様だし、たとえそんな雰囲気になろうとも互いにだけは手を出すことはない。
各々そういった対象ではないことなど重々承知で、だからルイスはこの二人に頼んでいるのだ。
自分をそういう目で見ることはなく、自分がそういう目で見ることもない信頼できる相手。
だというのに、当てが外れてしまった。
断られているのに無理に付き合わせるわけにもいかず、そうなると他に頼める相手もいない。
これはもう嫌だ何だと言っている場合ではなく、どうにかしてバレないよう町にでも繰り出すべきだろうかとルイスが物騒なことを考えていると、その気配を察した二人は引きつった顔を浮かべていた。

「…おいルイス、おまえ今何考えてる?」
「兄様に休暇をいただいて町で経験を積もうかと考えています。モランさん、そういったことに詳しい店はご存知でしょうか」
「知らねぇし知ってても教えねぇよ!」
「ルイスさん、それは止めた方が良いですよ。ウィリアムさんもアルバートさんも良い顔をしません」
「ですが…」
「ごちゃごちゃうるせーな、ったく!あいつらが知らないところで経験積んでどうすんだよ!」
「そうは言っても、せっかくお二人が贔屓にしてる体位を僕の未熟さで台無しにしてしまうなど許されることではありません」
「でもお二人は今のルイスさんとするセックスでそれが気に入っているんでしょう?なら今更ルイスさんが頑張ることなんてないんじゃないですか?」
「フレッドの言う通りだ。あいつらのことだ、どうせおまえが不慣れなところも含めて気に入ってんだろ」
「…」

果たしてそうなのだろうかと、ルイスは首を傾げるがひとまず町へ繰り出す計画は止めておくことにした。
自分よりも年若いフレッドが必死になって言い募るのだから止めるに越したことはないだろう。
だがもう一度だめ押しで「では五分で良いので体を貸してくれませんか」と頼み込んでも却下されてしまった今、どうやって経験を積めば良いだろうか。
不慣れなところを気に入られてると言われてもそんな実感はないし、少しでも慣れておきたいというのに困ったものだ。
顎に指をやってうんうんと思い悩むルイスを見て、モランは呆れたように声をかけた。

「はぁ…だったらウィリアムとアルバートに練習付き合わせたら良いだろ」
「何を言ってるんですか。お二人のために慣れておきたいのに、その二人に付き合わせるなんて本末転倒ではないですか」
「そうじゃなくて…ウィリアムさんと騎乗位、アルバートさんと対面座位の練習をすれば良いのでは?そういうことだよね、モラン」
「あぁ。それなら本人にはバレないし、ルイスが適当な奴とヤってウィリアムとアルバートの機嫌が落ちることもないし、良いこと尽くめじゃねぇか」
「…確かに」

なるほど、それならば何の問題もない。
それぞれとの夜を過ごす際に少し頼めば体位の希望くらいすぐに通るし、そこで感覚を掴んでおけばいざ本番というときにも役に立つはずだ。
ルイスは寄せていた眉間の皺を無くし、謎が解けたような晴れやかな表情でモランとフレッドに礼を言う。
その二人はルイスが町へ繰り出すこともなく、かと言って虚無を感じる練習相手になることも擬似セックスをすることもなくなった現状にようやく一安心しては息をつくのだった。



「ん、…兄さん、少しお願いが、あるのですが…」
「お願い?何かな」

ダラムに所有する屋敷、ウィリアムの部屋でいつものようにベッドを共にする時間。
たくさんのキスを受けて力の抜けた体が押し倒されそうになるのを必死に堪えて、ルイスはウィリアムの肩に手を添えた。
そうして間近で覗き混んだ鮮やかな緋色の瞳にぞくりとするほどの鼓動を感じ、それを誤魔化すように浮かんだ唾液を飲み込んだ。
彼が贔屓にしている体位は対面座位である。
あまり得意ではないがそれに関しては追々技術を磨くとして、今は彼ではなくもう一人の兄であるアルバートが贔屓にしている体位で体を慣らしておきたい。
ルイスは腕をずらしてその首元に抱きついた。

「今日は、僕が上に乗りたいです…」
「上に?」
「はい…兄さんは寝ていてください」

こう言えば聡明な兄は察してくれることだろう。
基本的にウィリアムの思うまま従順なルイスにしては珍しい希望に緋色を見開くが、そういう気分の日もあるだろうと特に気にはとめなかった。
寝ていて欲しいとは言うが後ろをほぐす必要もあるし、まだまだルイスの体に触り足りないのだから少しの猶予は大目に見てもらおう。
ウィリアムはそう考えてルイスの腰を抱き寄せて、隣り合ったままの姿勢でガウンを脱がせて中に着ているシャツのボタンを外していった。
肌蹴たシャツの隙間から現れ出たのは真っ白い肌に浮かぶ痛々しい手術痕である。
もう痛みは感じていないし、完治した今は呼吸苦を訴えることも循環が悪いこともなくなった。
全てはこの命の証がもたらしてくれた幸運なのだと、ウィリアムはそっと指を這わせて上から下へとなぞっていく。
歪な痕は指にもそれを伝えてくるけれど、不思議と不快な気持ちは一切感じられない。
どこもかしこも滑らかで真白い肌のうち、ここだけがざらついて赤黒い主張をしているというのも趣深い。
生きていると、ウィリアムに如実に教えてくれるこの部分がとても大事で愛おしかった。
そっと屈んで唇を寄せ、痕よりも少しだけ左側、心臓に近い部分にそっと吸い付いてみせる。

「…っ…に、ぃさん…そこ、あまり…」
「あぁ、ごめんね。嫌だったね、そういえば」
「ふ、ぅん…」

ウィリアムの髪の毛が胸元をくすぐり、吸い付かれてぞわりとした快感が背筋を通り過ぎる。
恐らくは白い中に赤い痣が残ったのだろう。
それだけなら文句もないが、醜い傷跡に触れられることをルイスは特に嫌っている。
思わずその肩を引き離すように腕を伸ばして距離を取った。
そんな弟の行動を咎めるでもなく、ウィリアムは今しがた付けたばかりの吸い痕を見て満足げに瞳を緩ませる。
そうして薄く割れた腹筋を辿るように窪んだ臍へと指を沿わせ、ゆっくりと手のひら全体で下腹部を優しく撫でていく。
まるでマッサージでもするかのような柔らかい動きと温かいその手に、ルイスは呆けたように息を吐いた。

「…今日は、ここまで届くかな」
「…!」

混ぜるように手のひらを動かしてそう囁かれれば、想像するのはこれから先の行為についてだ。
臍下、今ウィリアムが指を沿わせているこの場所まで挿入したいと、彼はそう言っている。
どこまで届くのかなどルイス自身よく分からないが、こんなところまでウィリアムが挿入ってきてしまうなど想像するだけでも腰が疼く。
頬どころか耳元まで赤くしたルイスが未だ胸元で顔を埋めているウィリアムを見下ろせば、上目で綺麗にカールした睫毛の奥に楽しそうな緋色が見えた。
からかっている、ように見えてこれは本気だ。
ウィリアムは騎乗位という体位でルイスの自重を利用し、奥まで自身を挿入しようとしているのだ。
思わず息を詰めて飲み込めば、閉じた唇をこじ開けるように口付けられた。

「ふっ、ぁ、んんっ…ぅ、む」
「っは…ルイス、触るよ」

互いの舌を絡め合って唾液を交換し、歯列をなぞられて口蓋を刺激されればルイスの思考は簡単に溶ける。
ウィリアムの腕に寄りかかって言われるままに頷けば、兄の手は焦らすことなくルイスが着ている衣服を下着ごと剥ぎ取った。
そこから覗くのは少しだけ勃ち上がったルイス自身で、もう何度も見られて何度も触られているとはいえ、このまま晒した状態でいるというのも羞恥を煽られる。
ルイスは細い足を重ねるようにして動かし、ウィリアムの体に抱きつくようにして何とか下半身を隠そうと試みた。
けれども所詮は無駄な努力に過ぎなくて、くすりと笑う兄の手によりそこは簡単に暴かれる。
白く弾力のある太ももを押しやられ、空いた隙間に手を差し込んでそのまま握られてしまえば、ルイスには甘い声をあげるしか道はない。
淡いピンク色に染まった性器は特に敏感で、いとも容易くルイスの肩が跳ねては高い声が聞こえてきた。

「ぁ、っん、あぁっ…」

抑えることなくあがる嬌声に気を良くしたウィリアムは、ルイスの持つ染まった頬に軽いキスをする。
細く長い指を巧みに動かして快感だけを与えてあげれば、聞こえてくるのは途切れることのない可愛らしい喘ぎ声だけだ。
時折混ざる自分を呼ぶ音にも欲を煽られる。
溢れる先走りを全体に馴染ませて丁寧に愛撫していくと左右の足が震えていることに気が付いた。
目にも愉しいその光景はずっと眺めていたいほどだけど、今日はルイスが珍しくも積極的に上に乗りたいと申し出てきたのだ。
彼の理性が残っているうちに行動に移させてあげなければならない。
普段通りウィリアムの思うままに愛撫して蕩けさせてしまっては上に乗るどころではないし、もしそうなった場合は後でルイスが拗ねるのは目に見えている。
だから前戯もそこそこに、ウィリアムは射精したがる性器を離してその奥へと指を這わせた。
まだ硬く閉じてはいるけれど、指が届いて縁をなぞっただけでひくりと疼いているのがよく分かる。
片手で先程まで触れていた臍に触れ、もう片手で秘部の表面だけをなぞっては弄ぶ。
もどかしいだけの快感にルイスの腰が誘うように動くのもすぐのことで、焦らすことのないようウィリアムは常備してある潤滑油を手にとって指に絡わせた。
そのまま傷を付けないよう慎重に指を入れていき、内側をほぐすように肉壁を拓いていく。
引き入れるように締め付ける圧迫感と同時に、熱く蕩けるような快感を覚える。
指先だけで感じるその快感にウィリアムはごくりと喉を鳴らし、ルイスは奥を弄られる快感に息を荒くさせてはむき出しの性器を揺らしていった。

「んっ、ん…にいさ、も…ぁ、んん、欲しい、です…ふ、ぅ」
「あぁ、良いよ。もう準備は出来た」
「ぁ…」
「今日は上に乗るんだろう?」

ウィリアムの問いかけに頷くことで答えを返し、ルイスは潤んだ大きな瞳を兄に向けてもう一度キスをした。
薄いけれど柔らかいその唇を存分に堪能してからその体を押し倒し、何も着ていない下半身のまま彼の腰元へと跨っていく。
騎乗位という姿勢はアルバートが好んでいる体位ではあるが、おそらくはウィリアムも嫌いではないだろう。
今は彼のために動いて気持ち良くしてあげたい。
ほぐされた秘部に感じる硬くて熱いウィリアム自身にまたも腰が疼き、ルイスは震える手で彼の着ているシャツのボタンを一つずつ外していく。
ボタンを全て外し終わって露わになったその体に自分のそれを重ね合わせ、気持ちを隠さず抱きしめるように縋り付いた。
合わさる肌に感じる鼓動が力強くて、熱いほどに火照った体温と合わせてとても安心できる。
ルイスは浮かんだ笑みを隠さず半身を上げて、妖艶に微笑むウィリアムの顔を見下ろした。

「兄さん、重くないですか…?」
「大丈夫だよ」
「ん…では、いれて、いきます…ぅ、あ」

ウィリアムの下着から彼の性器を取り出し、指で支えたままゆっくりと腰を下ろしていく。
挿入する際のキツさにはなれないが、痛いというほどでもない。
短い時間であったというのに十分ほぐしてくれていたようで、一番狭い部分を超えた安心でルイスはすんなりと腰を下ろしていった。
小さく息を吐いて整えながら体の奥深くまでウィリアムを迎え入れれば、自然とその腰に座り込む姿勢になり、普段よりもずっと兄を感じることが出来る。
内部が彼の性器と馴染むまで瞳を閉じてやりすごし、ルイスは大きく息をついた。

「奥まで、はいりました…」
「あぁ…動けるかい?ルイス」
「大丈夫、です…んっ」

瞳を開けた先にいるのはじっとこちらを見つめている兄の顔だった。
ルイスの顔も性器も繋がっている部分も一目で見られてしまうこの姿勢はやはり羞恥を煽られるけれど、ウィリアムの顔は至極愉しそうだ。
おそらくはアルバートも視界的要素含めて騎乗位という体位がすきなのだろう。
せめて隠せる部分は隠してしまおうと、ルイスは往生際悪くウィリアムの腹に両手を付いて己の性器を隠してしまった。
震える膝を庇いつつ腰を上げて、まずは試すように時間をかけて腰を下ろす。
内側を擦られる感覚は堪らなく気持ち良いが、まだ思うように動けず物足りない気分だ。
もう少し腰を上げれば良いのだろうかとウィリアムの腹に添えていた手に力を込めて体を上げようとした瞬間、その手を彼に取られてしまった。

「っえ、ぅあっぁんっ」
「隠してはいけないよ、ルイス」
「んっ、ぁ…!」

両手の指を絡め握られて、支えにしていたものをなくしてしまった反動で腰をしっかりと下ろしてしまった。
その結果、ウィリアムの性器がルイスの体内の奥深くまで侵入してしまったようだ。
もうこれ以上は挿入できないと思っていたのにそこを軽々超えてしまったらしい。
ルイスは内側全てをウィリアムで犯されている状況に感じ入り、それを認識すると同時に勃ちあがった性器が期待を込めるかのように揺れていた。
完全に座り込んだ姿勢で身悶えるルイスを見てウィリアムもその快感に大きく息を付き、互いの手を握りしめてルイスの中が馴染むのを待つ。
俯いて瞳を閉じるその表情も、腕で隠そうとしていた震える性器も、その奥で繋がっている部分もよく見える。
絶景だなと、上向く口角を自覚しては握るその指を撫でていった。

「大丈夫かい?」
「ふっ…ぅ、は、い…」
「せっかく乗ってるなら、隠すのは良くない、かな」
「…はぃ…」

己の姑息な考えなどやはりウィリアムにはバレていたのだ。
ルイスは観念したように兄の顔を見下ろして、謝るように繋いだ両手を握り締めた。
その反応を見てからウィリアムは互いの手を離し、薄い腹に向けて腕を伸ばしては撫でていく。
先程ここまで届くかどうか尋ねたが、恐らくはこの辺りまで挿入できているのだろう。
ウィリアムは機嫌良くルイスの腹を撫でて腰を動かし、その意図に勘付いたルイスは肯定するように内側をきゅうと刺激するように力を込めた。
ちゃんと届いていると、奥までウィリアムでいっぱいだと、そんな思いを込めて熱っぽく潤んだ赤い瞳で兄を見下ろす。
快楽に溺れて随分と艶やかなその表情に、ウィリアムの性器がルイスの中でドクンと脈打っては硬くなる。

「ふふ。じゃあ、そろそろ動けるかい?」
「は、い…んっ、兄さん、」
「足を開いて…そう、無理に腰を上げなくてもいいよ」
「んっ…あっ、ぁん、ん!」

手を付くことは駄目だと言われてしまったので、何とか膝を支えに腰を動かしていく。
前後と左右へと回すように腰を振り、慣れてくると次第に上下運動も加えられるようになった。
気持ちの良いポイントを順繰りと探すような動きはウィリアムにも確実に快感を与えていて、初めてではないのにいつまで経っても初々しい仕草はより一層の欲を煽られる。
逸る気持ちのままウィリアムは両手をルイスの腰元へと伸ばし、掴んだ状態で自分の腰も動かしていった。
二人分の動きで増していく快感に悶えつつも、ルイスはウィリアムの顔からは視線を決して外さない。

「に、さんっ…にいさ、ぅあ、んっ…!」

愛おしそうにウィリアムを呼び、懸命に快感を追うため腰を動かす弟を見る。
思うように動けないが視覚的要素の強い騎乗位という体位、積極的な様子と相まってとてつもない快楽と充足だ。
ウィリアムは彼の腰に添えていた手を後ろにずらし、弾力のある尻を揉みこむように愛撫した。
強めに触れば締め付けは強くなるし、目の前の性器からも先走りが垂れていく。
分かりやすい快楽の表現は可愛らしくて、もうそろそろイかせてあげるのも良いだろうと、ウィリアムはベッドのスプリングを利用して一際大きくルイスの中を突いていった。

「ひっ、あっあぁっ…!」
「っく…ふぅ…」
「ん〜…ふ、ぅ…」

ルイスが特別気に入っている性感帯を突いてあげればあっという間に射精した。
気持ち良さそうに白い精液を吐き出す様を間近で見て、達したばかりでグラつく体を抱き寄せるように腕を引けば待ち望んでいたように体を倒してくる。
中でウィリアムが吐き出した精液がくちゃりと厭らしい音を立てていたが気にはせず、甘えるようにその首元へと顔を埋めて思い切り息を吸った。
慣れた匂いと体温を感じて、髪を撫でてくれる仕草が気持ち良い。
乱れた金髪を擦り付けるように頭を振って縋り付いても嫌がることなく受け入れてくれる。
しばらく繋がったまま抱き合って互いの気持ちを満たす時間は尊くも淫靡なものだ。
そんな事実と時間を温かく思いながら、上手に出来たのだろうかとルイスはウィリアムの顔を見上げて問いかけた。

「…兄さん、気持ち、良かったですか…?」
「ん…良かったよ。ルイスは?」
「…多少恥ずかしくはありましたが、気持ち良かったです」
「そう。…上手に動けていたから、きっとアルバート兄さんも喜んでくれる」
「はい…え?」
「ふふ」

心地よい倦怠感の中、褒められて気を良くしたルイスは目を閉じていく。
ウィリアムが喜んでくれたのならばアルバートもきっと喜んでくれる。
兄さんと同じくらいに喜んでくださると良いなと思いながら囁かれる声を聞いていると、思いもよらないことを言われてしまった。
何も言っていないのに気付かれていたとでもいうのだろうか、この兄は。 

「な、何故…」
「兄さん、騎乗位がすきだと言っていたしね。ルイスが頑張ってくれるのならきっと喜んでくれるよ」
「…そう、だと良いのですが」
「大丈夫、僕が保証する」

アルバートのために頑張ろうとするルイスは健気で愛おしい。
珍しくセックスの体位を指定したのもきっと彼のためなのだろうと、ウィリアムは何となく察しが付いていた。
自分に抱かれながら別の人間のことを考えられるのは気分の良いものではないが、ルイスの場合はきちんとウィリアムのことを考えていた。
ウィリアムの快感と自分の快感を追って、いつものようにとろんとした表情を見せてくれていたのだ。
その延長にアルバートがいるのならば不満はないし、その健気さが何とも可愛らしい。
熱のこもった弟の体を抱きしめて、ウィリアムは太鼓判を押すように背中を撫でてはキスをしていく。
よく出来ていたよ、飾らずいつものルイスでいれば兄さんも満足してくれると、そう教え込むように言葉を紡げば、嬉しそうに笑みを深めたルイスがますます力強くウィリアムの体に縋り付いた。
頑張りますと耳に囁き入れられた言葉を噛み締めて、ウィリアムは第2ラウンドだとばかりに上に乗った体をベッドに押し倒し、正常位でその体を堪能するべく抱きしめては腰を振っていった。



そんな夜を過ごしてしばらくした頃、ルイス一人がロンドンの屋敷に戻る予定が出来た。
領地の管理に際して住民からの意見書が複数届いているというのだ。
さすがにジャック一人へ任せきりに出来る案件ではないため、ウィリアムを置いてルイスは一人ロンドンへと帰省していた。
そうして一通りの業務を無駄なくスムーズにこなし、時間がかかるだろうと見込んで早めに帰ってきていた内の二日間は丸々空くことになってしまう。
それならばと、仕える邸を変えて碌な休暇もなかったジャックに束の間の休息を贈ろうとルイスは考えた。
師からは不要だと言われてしまったがこの屋敷においての上司は自分だと言い張り、十分に休んでほしいと訴えれば最終的には快く了承してくれる。
結果としてアルバートが夜間に帰宅する際、出迎えはルイス一人になった。
偶然といえば偶然ではあるが、都合が良いことには違いない。
長兄の寝室に置かれているベッドシーツを洗い立てのものに交換し、ふと夜についてを想像しては不謹慎だとばかりに頭を振って煩悩を追い払っていた。

「ルイス、おいで」
「に、兄様…ん、ぁ」

ルイスは夜遅くに帰ってきたアルバートに夕食を用意し、汗をかいたとシャワーを浴びに行く姿を見送って、何かを言われる前から自主的に彼の寝室に置かれている大きなベッドに腰掛けていた。
そうしてやってきたのはまだ湿った髪を下ろしている湯上りの兄である。
ほのかに上気した頬が血色の良さを表していて、ガウンから覗く細身でありながらも引き締まった肉体にゾクゾクしてしまう。
思わずルイスが見惚れているとアルバートはその様子をさして気にもせず、隣に腰掛けては弟の細い腰に腕を回してその頬にキスをした。

「…このシーツは洗い立てのものかな」
「は、い。よく晴れていたので、クリーニングから帰ってきていたものを再度洗い直しました」
「ありがとう、気持ちの良い手触りだ。だが…少し勿体無いな」
「勿体無い…?」
「あぁ。どうせすぐに汚してしまうだろう?」

そう囁かれた言葉の意味を理解するよりも前に、アルバートの手がルイスの前髪を掻き上げて露わになった耳に舌を這わせる。
直接流し込まれるような水音と快感はルイスの肩を震わせて、思わず目の前の兄のガウンを手に縋り付いていた。
どうせすぐに汚してしまうなんて、これから先の情事を予感させるしか効力を持たない言葉だ。
潔癖症で綺麗好きなこの兄から出た端的な言葉だからこそどこか倒錯的で、煽られる言葉である。
シーツを整えたときに同じことを考えていたのだと言えばこの兄は喜ぶだろうか。

「…替えはあるので、いくら汚していただいても構いませんよ」
「それは何より」

昼間の自分について多くは語らず、ルイスは赤くなっているだろう頬を自覚しながらアルバートを見た。
せっかく二人きりの夜、存分に抱いてほしいと湿った髪を気にせずその首元に腕を回して抱きついた。
先日ウィリアムから励まされた騎乗位を今夜試すのも悪くないが、その彼のために対面座位の練習もしておきたい。
ルイスはシャボンの香りがするアルバートの匂いを思い切り吸い込んで、大胆にもその膝に乗り上げて敬愛する兄を見下ろした。
珍しい、とわずかに翡翠を見開く彼を見て細い息をつく。

「…ウィリアム兄さんは、対面座位がお好きだと知りました」
「へぇ…それがどうかしたのかい?」
「…あまり、得意ではないので…今、兄様と練習しても良いですか?」

ウィリアムとのセックスの際、挿入込みでは意識が蕩けてあまり記憶が定かではなかった。
快楽に弱い自分であればそうなるのも無理はないとルイスは冷静に自己評価を下していて、同じようにアルバートとのセックスで対面座位をこなしても経験値はあまり増えないだろうと思うのだ。
何故バレたのかは分からないがウィリアムには体位を指定した理由を気付かれてしまったし、そうであればアルバートにもそのうち気付かれてしまうのは明らかである。
それならば最初から慣れておきたいから練習したいと伝えて、衣服を着た状態で擬似セックスをした方が良いだろうと結論付けたのだ。
本当ならばモランかフレッドとする予定ではあったが、アルバートの上に乗る方がルイスにとって抵抗はない。
重くないだろうかと気にはするが、兄と密着出来るのは嬉しいのだ。
快楽に溺れる前、しっかりと意識を保った状態でアルバートとの対面座位をすればきっと今後の役に立つ。
ルイスはそう考え、隠すことなくはっきりと目的を告げてアルバートに懇願した。

「…相変わらずウィリアム思いだね、ルイスは。良いだろう、付き合おうか」
「…!ありがとうございます、兄様」
「それで、私はどうすれば良いのかな?」
「僕が動くので、兄様は座っていてくだされば大丈夫です」
「君に触れても良いのかい?」
「…程々でしたら、構いません」

了解、とアルバートはルイスの頬にキスをして頭を抱き寄せた。
滑らかな肌の感触は唇で触れていて気持ちが良いし、かといって火傷跡の部分に触れてもそれはそれで愛おしい。
恥ずかしそうに染まる鼻先にもキスをして、好きなように動くと良い、と声を掛けた。

「んっ…兄様、重くはないですか…?」
「気にならないよ。ルイスはもう少しウエイトを増やしても良いくらいだ」

アルバートのキスを受け止め、挿入されているていで彼の下半身を覆うように座り込む。
まだ勃ちあがっていないが存在感のある彼自身を敏感な部分で感じ取り、知らずに腰を擦り付けるように動かしてしまった。
その外見からも元々の性分からも、ルイスは性に控えめだということは間違いない。
けれど今この仕草からは控えめどころか積極性しか見えなくて、隠しきれないルイスの欲を表しているようで心地良い。
無意識に動く腰を笑いながらアルバートはその背を上から下へ撫でていき、触り心地の良い尻へと手を回していく。
弾力のある感触は気持ちが良いし、ルイスも少しだけ快感を得ているようだ。
もぞもぞと動く腰を感じ、僅かに漏れ出る吐息を浴び、鮮やかに色付いて震える唇を覆っていく。
そのキスを受け止めたルイスはアルバートの体にぎゅうと抱きついてから、更に足を開いて膝をベッドへと付けた。
密着する腰が張り詰めたように疼いている。

「兄様…足は、兄様の腰に回さない方が、良いのでしょうか…?」
「何故?」
「僕は足を回したいのですが、そうなると動きづらいのかと…」

アルバートの腹に下半身を押し付けて、ルイスは彼の頭を抱き込むように額を合わせた。
至近距離で見ても兄は気高く美しく、けれども欲を露わにした雄を感じさせる顔付きをしている。
今までルイスが経験した対面座位では足を兄の腰に回し、下から突き上げられる動きに合わせて多少上下に揺れていた程度だ。
それで十分気持ちが良かったし、どちらの兄も中に出してくれたからそこそこの快感はあったのだろう。
だが結局ルイスはあまり動けていないのだから、密着したいという希望は我慢してしっかりと足をベッドに付けた方が良いのかもしれない。
どちらが良いだろうかと、ルイスは首を傾げてアルバートの顔を見下ろした。

「ルイスの好みで構わないが…せっかくだし、どちらも試してみれば良いだろう」
「あ、それもそうですね…では、兄様…少し、動きますよ」
「あぁ」

アルバートの提案通り、ルイスはまず自分の好みとして彼の腰に足を回して互いの体をしっかりと密着させた。
そうして感じるアルバート自身目掛けて上下に腰を振ろうとしたが、中々踏ん張りが利かず上手く出来ない。
しばらく下手な動きを繰り返していたが足の筋肉を妙に使ってしまい、快感よりも無駄な疲労が目立ってしまった。
そんなルイスを見兼ねたアルバートが腰を支えて動きをサポートしてくれる。
優しい兄の行動に安心して、上下運動よりも直接アルバートの性器目掛けて腰をぐりぐりと押し付けるように動けば、たとえ服越しだろうと気持ちが良い。
満足げに頬を緩めるルイスを見たアルバートは、膝の上に乗った弟の胸元で主張する突起に吸い付いた。
淡く色付いたそれをシャツ越しに舐めていけば段々と固く芯を持っていく。

「ひっゃ…あ、にぃさま、んっ」
「腰を浮かせてしまっては駄目だろう?」
「んっ、ぅん…ぁ、あ」

突然の刺激と快感に腰が跳ねるがアルバートの言葉を聞いてすぐに腰を下ろし、力の入った太ももで彼の腰を挟んで締める。
ウィリアムのため健気に頑張るルイスを間近で見るのは気分が良いけれど、これだけ魅力的な彼を前にして何もしないというのはありえない。
事前に言質は取っていたのだからと、アルバートは口に含んだ果実を舌先で潰すように苛めては労わるように優しく舐めていった。
噛んで、吸って、舐めて、潰す。
単調な動きのはずなのに抑えきれないほどの快感がルイスを襲っていて、随分と感じやすい体になったものだと思ってしまう。
けれどアルバートもウィリアムもそれを喜んでくれているからルイスも嫌ってはいないし、兄好みの体になっているのだと思えばむしろ誇らしいほどだった。
片方の果実をアルバートに弄られ、もう片方の果実は何もせずに放置される。
だがそこもまるで触れて欲しいと主張するように赤みを帯びていると思うのは、アルバートの欲望からくる錯覚だろうか。
甘く喘いでいる声を心地良く思いながらルイスの体を堪能していると、膝に乗る彼の動きが段々と緩やかになっていき、ついには止まってアルバートの膝上に座り込むだけになってしまった。
すっかり形作って膨れている果実へ優しく歯を立ててから強めに吸い付き、遊ぶのを一時中断しては弟の顔を見上げる。

「もうおしまいかい?」
「…ふ、ぁ…に、兄様、そこ…弄るのをやめてほしい、です…ん」
「…ルイス、次は足を外してベッドにつけた状態で動いてみてはどうだい?両方試さないとどちらが良いか分からないからね」
「ん、はぃ…」

胸元を弄られてしまっては上手く動けない。
気持ちは良いけれど今は触れないでほしいと潤んだ瞳で頼み込むルイスを見てアルバートの腰は疼いたが、だからといって下手に約束することも出来なかった。
せっかく目の前で可愛いことをしているのだから触れるくらいは自由にしても良いだろう。
可愛い弟の可愛い要望を聞かなかったことにして、アルバートは触れていた尻をもう一度揉み込んで次の行動を促した。
腰に回された足がゆっくりと離れていくのを感じ、ルイスはスプリングの効いたベッドの上に膝をつける。
そうしてアルバートの首にちゃんと腕を回し、そこを支えにして上下に腰を動かしていく。
与えられた刺激と愛しい兄と触れ合っている状況はルイスに充足感を与えていて、性器は先程よりもずっと大きく固くなっていた。

「んっ、ふっ…ぁ、兄様、ぅあ、ぁ」
「こちらの方が動きやすそうだね…」
「兄様、ん…気持ち良く、なれそうですか…?」
「あぁ、悪くない」

アルバートの声に気を良くしたルイスは、彼の性器にちゃんと快感を与えるように柔らかい尻を押し当てていく。
そうして感じるのは反応して硬くなっているアルバート自身だ。
言葉だけでなくその体でも答えをもらえたルイスの顔には自然と笑みが浮かんでいた。
しばらくアルバートの体にしがみ付きながら気ままに腰を動かしていく。
そこで分かったのは、足を開いた方が兄を支えにしっかりと動けて上下も左右もルイスの思うままに腰を振れることだった。
全身でしがみつくように足を回すのがすきではあったがこれはこれで悪くない。
今は衣服を着ているけれど、いざ挿入されたとなれば中を思い切り擦ってもらえるということなのだから。
ルイスはそう考えて動きを止め、アルバートの顔を覗き込んでは互いの唇を合わせた。

「…こちらの方が、動きやすいです」
「それは良かった」
「兄様はどちらがお好みですか?」
「…どちらも一長一短がある。ルイスの気分に合わせれば良いだろう」

今まで通りでも積極的に動いてくれる方でもどちらもルイスはルイスだし、感じ入る顔がすぐ近くにあっていつでも抱きしめられるのだから結局は魅力的な体位だ。
そのときのルイスの好みで変わるというのも趣深いし唆るものがある。
そう考えて答えてあげれば、ルイスはふんわりと表情を緩めてもう一度キスをねだっては抱きつく腕に力を込めた。

「ウィリアム兄さんも、そう言ってくれるでしょうか…」
「あぁ、きっと」

愛しいウィリアムのために頑張るルイスを知れてアルバートは気分が良い。
蜜のように甘い時間を過ごすだろう弟達を思うと欲が煽られるし、ウィリアムのために積極的に動くルイスもそれを受け入れるウィリアムのどちらとも是非この目に焼き付けたいものだ。
どくりと脈打つ自身を自覚して、アルバートは未だ膝に乗って楽しげに笑うルイスの体をそのままベッドに押し倒した。

「兄様…?」
「おまえの練習に付き合った見返りとして、次は私の希望を聞いてもらおうか」
「…はい、何でもどうぞ」

捕食者の目をして自分を見つめる兄を見て、ルイスは喉を鳴らしてその肩に腕を添えた。
従順な弟を前に唇を舐め、アルバートは先程からずっと自分に擦り付けては快感を拾っていたその性器を目にするべく衣服を脱がしていく。
そうして現れた震える性器へと愛おしげに触れて、共に長い時間を過ごそうと体を重ね合わせていった。



(…さすがに毎回お二人の贔屓の体位では身が持ちませんね)
(ふふ、毎回はさすがに僕も困るかな。そのときの気持ちのままルイスに触れたいと思うし、普通の体位でも十分満たされるからね)
(そう、ですか?)
(たまにしてもらう程度が丁度良い。見下ろされるのも悪くないが、いつものように見下ろす方が色々と楽しめる)
(お二人がそう言うのであれば…)

のらくらり。

「憂国のモリアーティ」末弟中心ファンサイト。 原作者様および出版社様、その他公式とは一切関わりがありません。

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